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息抜き企画・アンケート3位小話

書きあがったので、投下します。
本当は1,2位だけにするつもりでしたが、気が乗ったので3位までにしてみました。
という事で、3位のおぬはて・相馬祖父の小話です。

尚、エンド後の後日談になるので、エンド後の閲覧を禿しく推奨いたします。
折り曲げからどうぞ。

 

※無断流用・転載厳禁です。

35年目の贈物



※第三者視点です。
また、相馬さん祖父の薩摩弁は、変換サイトさまを利用しています。

***

 その日、夕飯には少し早い時分に相馬の携帯が鳴り出した。
液晶を見れば、そこには祖父の名前。
「もしもし、祖父(じい)ちゃん?」
「おう、相馬。
……ちっと頼まれてくうっちゅうか(くれるか)?」
 開口一番、祖父はそんな事を口にした。
祖父にしては珍しいと思いながら、相馬に否は無かった。
「勿論。
でも、如何したの?」
「うむ……ちっと言い難いこっじぁなぁ(事でな)」
 そこで、相馬は気づいた。
普段、奔放かつ豪快を地で行く祖父が言葉を濁す理由など、そうそうある事ではない。
というか、ほぼ確定していた。
「祖母(ばあ)ちゃんの事だね?」
 半ば確信していたが、相馬はあえて問うた。
「う、うむ……やっぱいわかぁか(やっぱり解るか)?」
「そりゃあね。
祖父ちゃんが唯一勝てない相手なんて、祖母ちゃんくらいだし」
 常ならば、根拠も無く自信に満ち溢れ、老いて尚益々盛んだと言われる薩摩隼人の祖父の意気を此処まで殺げるのは、その伴侶しかいなかった。
「……また、怪我でもしたの?」
 祖母は祖父とは違って落ち着いた性分で、常に笑顔を絶やさない小柄な女性だった。
相馬もよく祖父達の家に遊びに行くが、祖母が怒ったところなど滅多に見た事が無い。
怒る時といえば、大体祖父が無理をした時や怪我をした時と相場は決まっていた。
 だから、相馬は苦笑交じりに問うたのだが。
「そげなこっじゃなか(そういう事じゃない)。
……その、おなごの好みっちゅうのをな、知いたくて……うむ」
 祖父にしては歯切れも悪く、何やら電話の向こうでゴニョゴニョと呟きをこねている。
そこで、相馬は目の前に置かれていた卓上カレンダーを見た。
祖母の誕生日には、早い。
となれば、思い当たる事は絞られた。
「もしかして、記念日?」
「うむ……今度の日曜が結婚記念日じゃった」
「! おめでとう。
それなら、もうすぐだね」
「う、うむ……」
「ああ、だからなんだね」
 大学の講師や遺跡の件で多忙な祖父であるから、祖母の誕生日や記念日を憶えているだけでも大したものだと相馬は思う。
だからこそ、今回の件についても、微笑ましさが先に立った。
「でも、それなら母さんの方が良いんじゃ?」
「……そやそうだが、あれは口が軽うていけん(いかん)」
「あー……そうだね。
母さんならバラしかねないか」
 言われて、相馬は苦笑しながら納得した。
相馬の母は、容姿こそ祖母に似たようだが、気性は祖父をそのまま女性にしたような豪快さで歯に衣着せない。
ゆえに、黙っていてくれと頼んだところで、然程効果が無いのは家族の中では周知の事だった。
 因みに、そんな豪快さと丼をかっこむ姿に惚れ、相馬の父は婿入りを決めたらしい。
聞いた当時は思わずツッコミを入れた相馬だったが、確かに母の喰い方は清々しいほどに漢前だったので、納得した。
ただ、尊敬しているものの、父の感性はちょっとズレていると相馬は思っている。
 しかし、蛙の子は蛙。
相馬も自覚が無いだけで、この若さで彫刻――それも、仏像彫刻にただならぬ情熱を注いでいる辺り、間違いなく父と祖父の遺伝子の融合によるものである。
 と、話までもズレたが、そんな父でもやはり現茅野家の大黒柱。
妻と娘に甘い祖父と真っ向から対して母を娶ったのだから、漢としての気概は存分にあったと言えよう。
母が言うには、その時に気概を使い果たして今は落ち着いたが、その当時は物凄かったという。
その片鱗は、確かに相馬にも受け継がれている。
「何年目だっけ?」
「35年にんもんで(になる)」
「そんなになるんだ……」
「うむ」
「そっか」
 相馬は、深く問わず相槌だけを返した。
祖父と祖母は、ご近所さんも羨むほどに仲睦まじいが、実は駆け落ちだった。
 その当時、祖父が故郷を離れ、祖母と一緒に此処に移り住んだ背景には、それは筆舌に尽くせぬ事があったのだろう。
それについては祖父は黙して語らず、祖母は微笑むだけ。
娘の母にさえ話せず、故郷に里帰りすらしないのだから、未だ傷は深いのだろう。
何時しか、過去については触れない事が、家族の暗黙のルールになっていた。
 だからこそ、祖父が祖母を大事に想い、大切な記念日に最高の品を贈りたいという気持ちは理解に易い。
相馬としても、協力を惜しむつもりは無かった。
「……それなら、珊瑚婚式だよね。
珊瑚の品を贈るっていうのが定説だけど」
「そうなあ(そうだな)。
……じゃっどん(だけど)、いけな(どんな)品を贈ればよかどか(いいんだ)……?」
「そうだねぇ……」
 電話の向こうから困り果てた声が届く度、相馬は込み上げる微笑ましさを噛み砕くのに苦労した。
この分では、祖母に怒られている時のように、祖父はその筋骨隆々の逞しい背を丸め、男らしい太眉を下げているのだろう。
 けれど、両親も含め、そこまで入れ込んだ相手と一緒に過ごせるのは素晴らしい事だと相馬は思う。
相馬にも想い人はいる――彼女を紹介するのは未だ先になりそうだが、こんな風になりたいものだと常々懸想(けそう)している。
「おい(俺)は、朴念仁だからいけん。
おまあ(お前)にしか、頼めん」
 朴念仁というよりは豪放磊落(ごうほうかいらく)である祖父は、きめ細かな女心を読む力が壊滅的だった。
父とは違った方面で尊敬しているが、残念ながら相馬もまた、それに対してだけはフォロー出来ない。
 以前など、祖母の誕生日に美味そうだからという理由で籠盛りの桃をそのまま買ってきた事があった。
その時、母はそれは辛口なコメントを叩きつけた。
「離れて暮らす前から何度も指摘してるのに、お父さんは本ッ当にダメね!
お母さんだから良かったけど、あたしだったらテンション下がっちゃう。
長年指摘して全く進歩が無いって、ある意味凄いわ」
 対して、父はこんなコメントをやんわりと述べた。
「どんな名画でも、人によっては素人の絵画の方が惹かれる事ってあるだろう?
だから多分、お義父さんは単純に『お義母さんの喜ぶ品』を選んでるんじゃないかな」
 言われて見れば、祖母は桃が好きだった。
だから、籠盛りの普通のビニール入りの桃でも、満面の笑顔で受け取っていたものだ。
それを思えば、正解なのは父のコメントだったのだろうと相馬は思っている。
とはいえ、母のコメントも強(あなが)ちはずれてもいないのも事実ではあった。
「だけど、そういうのは祖父ちゃんが頑張って選んで買った方が良いよ。
俺が選んで買ってきたんじゃ、ちょっと格好つかないと思うんだよね」
 だが、だからこそ――相馬はそう告げた。
「そうなあ(そうだな)……」
 しかし、祖父の不安は拭えず、相馬自身も不安が無いといえば嘘になる。
そこで、妥協案を出す事にした。
「じゃあ、俺も選ぶの手伝うから、先ずデパートか宝石店に行ってみよう。
祖父ちゃん、何時なら空いてる?」
「あいがとう、相馬!
そうなあ(そうだな)、土曜日の昼からなら……」
「んー……物凄いギリギリだけど、祖父ちゃんは忙しいから仕方ないか。
それで良いよ」
 祖父が頑張って時間を空けたのだろう事は想像出来たので、相馬もそれで承諾した。
とはいえ、相馬としても女心を理解しているかと言われたら否なので、不安はあったのだが。
「すまん、よろしゅ頼む。
おまあ(おまえ)も不安じゃったら、リコさぁ(さん)にも声をかけるとよかどよ」
「あ、なるほど。
それは良いかもしれないね」
 そんな雰囲気を読んだのか、出された祖父の案に相馬も頷いた。
「うむ、おなごの事はおなごに聞くのがよか」
 祖父の言う通り、女心に疎い男二人がうんうんと悩むより、余程良案だった。
後の問題は彼女が応じてくれるかだが、バイトは土日が休みだと記憶しているし、恐らく大丈夫だろう。
「確かにね。
じゃあ、後で――」
「相馬ー! ご飯よー!!」
 言いかけた相馬の台詞を遮るように、階下から母の夕飯を告げる声が聞こえた。
「おう、もうそげん時間か。
かあさぁ(かあさん)も帰ってくう(くる)頃じゃっで、こん辺にしごと(しとこう)」
 その大音量は祖父にも聞こえたらしく、笑いを含んだ声が聞こえた。
相馬が協力してくれる事が決まったからから、その声は何時もの陽気な音に戻っていた。
「そうだね。
後でリコに連絡してから、改めてメールするから」
 そんな祖父を再び微笑ましく思いながら、そう締め括る。
その間にも、階下から父を呼ぶ声が響き、再度相馬を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おう、すまん!
それでよかよ」
「じゃあ、またね」
「あいがとうな」
「さてと……」
 機嫌の良い祖父の声を聞きながら通話を切り、相馬がようやっと立ち上がると同時に、ドアをノックする音が聞こえた。
そうして顔を覗かせたのは、母だった。
「如何したの、相馬。
呼んでるのに返事もしないで」
「ごめん。
今、祖父ちゃんから電話があってさ」
 隠す事でもないのでそう告げれば、母は何度か瞬きを繰り返した後で手を打った。
「はは~ん、解った! ずばり、お母さんとの記念日の件ね?」
 そして、手にしていたおたまを突きつけ、母はにやりと笑った。
こうなっては、言い逃れをしたところで如何にもならない。
相馬は、潔く観念した。
「……知ってたの?」
「そりゃ、女で娘ですもの。
まぁ、お父さんも態度がバレバレだしね。
お母さんも気づいてるでしょうよ」
「……それはまぁ、ご尤も」
 確かに、祖父は解り易い人だった。
その娘である母もまた、解り易いのだが――藪を突付くほど相馬は野暮ではなかった。
「じゃあ、ついでに言っておこうかしら。
あたし達からはケーキを贈るつもりだから、あんたは花の一つでも贈りなさいな。
そのくらいのお金はあるでしょ?」
「へぇ、もうそこまで計画してたんだ」
「金婚式を控えてるから、そこまで盛大にはやらないけど、折角だからね」
 こういうところを見ると、やはり母は義理堅い祖父や祖母の娘なのだと相馬は思う。
「それは解ったけど、当日まで祖父ちゃんにバラさないでよ?」
「んもう! あんたまであの人みたいな事言うのね。
解ってるわよ!」
 そして、ぷりぷりと怒る辺りも祖父に似ている。
父が母に惚れた理由の一つに、見ていて飽きないからというのがあったが、なるほどと思う。
「そろそろ下に行こうよ。
父さん、待ってるんじゃない?」
「あ、そうだったわ!
ああ!! お鍋の火、消してたかしら!?」
 促せば、母は思い出したように慌しく声を上げながら、さっさと踵を返して下に降りていく。
「消し忘れてたとしても、父さんが消してると思うけどね」
 誰に聞かれるでもなく呟きながら、相馬もまた苦笑しながらその後を追った。

 ――後日、珊瑚婚式の当日。
その前日、相馬とリコを伴い、祖父がなけなしの感性を振り絞って祖母のために選んで買ったのは、淡い紅色の珊瑚をあしらった簪(かんざし)だったという。
それを、顔を茹で蛸のように紅くして、厳つい肩を縮めながら贈ったのは、言うまでも無い。

***

今回は相馬の祖父ちゃんの小話という事で、リコは友情出演に留めました。
何だかんだで、茅野一家は波乱万丈でも最終的にはリア充というイメージがあります。
尚、茅野一家をまとめると以下の通り。
祖母ちゃん:常に笑顔で可愛いコロボックルな感じの淑女。ただし、怒らせると茅野家最強。
祖父ちゃん:褐色ガチムチハイスペックGさん。ただし、祖母には弱い。
母ちゃん:祖父と祖母から爆誕した女版祖父だが、ガチムチではない。祖母に似て小柄。
父ちゃん:母ちゃんの豪快さに惚れ込み、婿入り。相馬に似た感じのダンディで、現在中企業の課長。
相馬:一人っ子。両親の結婚後に家を新築したが、近所なので幼少時から遊びに行くのが日課。好みが合う事もあって、祖父ちゃんっ子に。勿論、祖母ちゃんや両親の事も尊敬している。

尚、今回は明るめの小話でしたが、1,2位の小話はガッツリとシリアスになります。
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KUROZ

Author:KUROZ
黒いまめっぽいナマモノ。
最近、珈琲がうめぇ。
禿げ散らかすのが気になるお年頃。
まめっぷ。

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