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5万超え御礼・ネタ小話

カウンタ5万突破、誠にありがとうございます!
とりあえず、しょっぱい感じの新作ベースのオールキャラコメディ小話をもっさりと投下します。
キャライメージ崩壊(特に某魔術師)がヒドいので、重々お気をつけ下さい。
また、新作主人公も登場しているので、その辺りもご注意を。

尚、毎度ながらまめゲー全作においてネタバレを考慮しておりませんので、予めご了承下さい。
大丈夫な方は、折り曲げからどうぞ。

 
※無断流用・転載厳禁です。

そうだ、鍋をしよう。


※新作主人公視点です。

***

小話の前に、新作主人公のスッペクをば。
・名前:逆平(さかひら)シノメ
・年齢:16
・体型:もやし。セイタロウと同じ160後半くらいで小柄。筋肉に憧れるお年頃。
・知能:同年代の平均より下。国語と歴史と美術は得意、数学と理科は苦手。ついでに、音痴。
・長所:手先は何気に器用。家事も多少は出来る。
・短所:豆腐メンタル。ぼっちにされると泣いちゃう。
・備考:伝統のさ行縛り。苗字に何気に設定由来有り。セイタロウの友達。

***

 ――そうだ、皆で具材を持ち寄って鍋をしよう。
誰が言い出したのかなんて、今となっては解らない。
ノリでイイネ!とどこぞのSNSボタンのようにポチッと同意しちゃったので、何でそんなフラグを立てたの!とか怒れない。
若さとは青さである、とは言ったものである。
 そんな若干の諦観と後悔を噛み砕いては噛み締め、オレは自宅の冷蔵庫の前で現実逃避を図っていた。
そもそも、一人暮らしの男子学生の冷蔵庫の中に、そんな気の利いた具材があるかって言えば――ある訳がない。
 認めよう、盲点だった。
盲点だったが……しかし――。
「……バケツプリンしかないって如何なの……?」
 期間限定でコンビニに売り出された、バケツといっても小ぶりのバケツサイズのヤツ。
それでも通常プリンの凡そ5倍はあろうかというブツ。
後で食べようと取っておいたコレは、如何見たってデザート枠。
 果たして、コレを鍋に入れようなどと思う輩が何処にいようか?
……いや、いない。
いない事にしたい。
「でも、マジでコレしかない……いや、だけどコレはダメでしょ?」
 しかし、現実は無情なり。
生憎、米も無い。
カップラーメンも食べ尽くした。
嗚呼、コレしかない。
「……何か買っていけば良いかな……」
 引き攣った顔で、オレはそっと財布を眺めた。
そして、そっと閉じた。
嗚呼、貧乏がニクい。

***

 そして、待ち合わせ時間が迫り、オレは現実に打ちのめされながらも家を出た。
行かないという選択肢もあったが、ぼっちでバケツプリンを突付く方が哀しかったので止めた。
オレ、泣いちゃう。
 やがて、とぼとぼと道端の石を転がしながら歩いていけば、見慣れたアイディンティティがそよいでいるのが見えた。
待ち合わせ前からスタンバっている几帳面なナイスボーイ――せーたろーだ。
「あれ? 元気無いね、シノメくん」
「あー、うん……」
 せーたろーが不思議そうにオレに問いかけてくるが、オレは曖昧に眼を泳がせた。
テンション高くイイネ!とポチッてたから、それもそうだろう。
 ふと、視線を泳がせた先で、せーたろーが持っている袋から葱や白菜と一緒にコショウが見えた。
葱と白菜は解るけど、何でまたコショウまで持ってきたの?
オレ、たまにせーたろーがよく解らない。
だけど、今はオレ自身の方がもっとよく解らない。
「……プリンしかなかったんだよね」
 オレは、そっと手にしたソレを見せた。
「……そのガッツは認めたいけど、今日は闇鍋じゃないよ?」
 しょうがない子だねと言わんばかりに、せーたろーは溜息を盛大に吐いた。
「解ってるけど、ナニも無かったんだもん」
「まぁ、一人暮らしだしねぇ」
「……うん、米もラーメンも切れててさ。
バイト料が入るまでピンチなのよね」
 ちょっと哀しくなって涙目になった。
オレ、男の子だけど豆腐メンタルだもの。
「もう、そんなにしんどいなら言ってくれれば良いのに。
ウチのお祖母ちゃんが農家だから、野菜はあるからあげようか?」
「マジ!? ありがと、せーたろー!!」
 ぶっちゃけると、今日を入れて後三日を如何に凌ぐかちょっと本気で困ってた。
先週、ついカッとなってジプリのDVD集を買ったのが痛かった。
だって、欲しかったんだもん。
「よぉ、二人とも早いな」
 と、そこへ真打がやってきた。
筋肉がステキなナイスガイ――だが、文芸肌である!!……の神代先輩と。
「やっほー! 今日は楽しみだねぇ!」
 オレの好敵手、見事なアイディンティティを生やした宮川科霊長目の宮川先輩だ。
宮川先輩もまた、言わずもがなオレと同じくイイネ!とシャウトした一人だったので、見るからにテンションが高い。
「何持って来たの?」
 そして、宮川先輩が早速振ってきた。
「ぼくは、普通に葱と白菜と……コショウはまぁ、念のためで」
 せーたろーが含みのある口振りで答えた。
「え、何の念なの?」
 オレは、ここぞとばかりに訊いた。
「色々あるんだよ」
 答えたせーたろーは、オレの眼を見なかった。
「お、おう……」
 その眼がマジだったので、オレは追求を止めた。
「えっと、じゃあ……お二人は、ナニを持ってきたっすか?」
 代わりに、オレは二人に話題を振った。
「俺は、家にあった舞茸とニンジンだ」
 流石、神代先輩は安定してマトモだった。
伊達に筋肉付いてない。
「あたしは、肉!!」
 宮川先輩も平常運転だった。
伊達の筋肉しか付いてない。
「シノメは?」
 嗚呼、来ちゃった。
「……バケツプリンです……」
 オレは、再び罪状を述べる罪人のように白状した。
「……そうか」
 神代先輩は、ただ相槌を打った。
その眼は、憐れみを含みながら明後日を見ていた。
触れてはいけないナニかを察する辺り、流石は宮川科霊長目の飼主さんだった。
「あ、案外甘味が出るかもね!」
 しかし、宮川先輩はやっぱり脳筋だった。
ちょっと安心した。
「闇鍋じゃありませんよ、宮川さん」
 せーたろーがやんわりと指摘した。
「普通にデザートで良いだろ」
 神代先輩も呆れた顔でツッコミを入れた。
「あ、そっかー」
 宮川先輩は、やっぱり残念な子だった。
「……とりあえず、行くか」
 遠い眼のまま、神代先輩が促した。
「そうしましょう」
「楽しみだねぇ!」
 せーたろーもぬるい笑みを貼り付けたままで頷き、宮川先輩は相変わらず能天気だった。
「嗚呼、いっそ手ぶらのが良かったかも……」
 一人呟きながら、オレは皆の後を追う。
他のメンバーの性格を思えば、バケツプリンの異様な浮きっぷりがハンパ無い。
デザートにしたって、鍋にプリンとか如何なの?と本気で思い始めている。
 そして、オレ達は思い思いのテンションで目的地に向かって歩き出した。
他のメンバーは、現地集合という事になっている。
 因みに、海外組はパラえもん先生がナンとかするそうなので、ナンとかなると思う。
最近、すっかり素が出て紳士から紅いタヌキにチェンジしているものの、もう誰もツッコミを入れない。
パラえもんだし、細かいところは良いじゃん!ってふいんきになっちゃってる。
「シノメくん、何時までも黄昏てないでよ。
大丈夫だよ、プリンはデザートにすればいいじゃない」
 せーたろーの優しさが沁みた。
ちょっと泣きそうになった。
「まぁ、全員で分けるにはアレだけど、それでも結構な大きさだからな」
「じゃんけんでゲームでもすれば良いんじゃない?」
 神代先輩と宮川先輩もフォローするように言ってくれる。
「うう、ありがとうございます……!
……だけど、また皆に白状するんすよね……」
 ナニその公開処刑。
また、泣きそうになった。
「大丈夫。
ツッコミどころなら、未だパラケルススさんとあのお笑い系がいるから」
 せーたろーが、不吉なフラグを立てた。
「パラケルススさん、何でああなったんだろうな……」
 神代先輩も眉を顰めた。
「おにくちゃんの方がマトモな時もあるもんねー」
 宮川先輩ですら、このコメントである。
しかし、最初の頃の紳士キャラは何処へ行ったんや!と嘆いたら、ホムンクルス双子に失笑を買ったのは記憶にも新しい。
元々、天才とナンとかは紙一重なアレがマントを着て歩いているようなアレだったらしい。
 そんな物騒なフラグを乱立させながら、オレ達は目的地を目指す。
この時は未だ、オレ達は割りと軽く構えていた。
だって、ボウヤだもの。

 ――恐ろしい光景を目の当たりにするのは、これからだった。

***

 目的地――という名の小高い丘にある森林公園の広場にやってきたオレ達は、早速さゆき姐さんを見かけた。
「こんにちは、さゆきさん!」
「さゆき姐さんどうもっす!」
「あら、こんにちは」
 オレと宮川先輩が挨拶すると、相変わらずステキな上腕二頭筋を晒した姐さんが挨拶を返してきた。
「さゆきさんは、何を持ってきたんですか?」
「私は、鳥つくねよ。
鶏肉が安かったからって、お母さんが買い過ぎちゃってね。
折角だから、つくねにしてきたのよ」
 せーたろーが聞けば、姐さんが苦笑しながら袋を見せる。
豪腕ながらに女性らしさを持ち合わせているとは、流石姐御。
「貴方達は?」
「俺とセイタロウは野菜です。
あーさは肉で、シノメは……」
 神代先輩が言いよどんだ。
視線も逸らされた。
「……バケツプリンでございます……」
 オレは、何度目かの赤裸々告白をした。
「……あ、うん、そう……」
 姐さんもまた、察したようにそっと目を逸らした。
この後悔処刑は、何時まで続くのでしょう?
「こんにちは、早いですね」
 と、そこへリア充カップルがやってきた。
「あら、相馬さんと帰子ちゃん」
「どうもこんにちは」
「こんにちは」
 和やかに挨拶を交わしつつも、オレ達の視線は相馬さんの持っている袋に注がれていた。
何か知らないけど、やけに袋がデカい。
「……あのう、そのブツは?」
 お前聞けよ!という視線を一心に浴びたオレが、意を決して問いかけた。
「あ、うん……祖父ちゃんが渡してくれたんだ、桜島大根……」
「……ああ、そういう」
 皆、納得した。
食材としては割と真っ当だったので、それ以上は何も聞かなかった。
大根は煮れば普通に美味しいし、桜島大根って結構レアだもの。
「私は、春菊を」
 そして、帰子さんが控え目に申し出た。
「あ、ぼく好きなんですよ、春菊」
 せーたろーが相槌を打った。
「しゅんぎくって、どんなのだっけ?」
「キク科の野菜だ。
キクとは違うけど、葉っぱが似てるからそういう名前がついてんだよ」
 宮川先輩に、神代先輩が解説する。
流石、筋肉系文芸肌。
「あさねちゃん、お肉ばっかり食べてそうよね」
 そんな様子を見て、姐御も苦笑した。
「よくお分かりで。
肉しか見えてないですから、コイツ」
 宮川先輩の脳筋っぷりは、これまた周知の事実でございます。
神代先輩も大変だ。
 しかしながら、周囲が和気藹々とすればするほど、壮絶なアウェイ感がオレを襲う。
豆腐メンタルな草食系もやし男子としては、咽び泣くしかない。
嗚呼、本当に何でバケツプリンしか無かったんだろう……?
「こんにちは!」
 と、そこに幼女の声が響いた。
「シーちゃん!」
「あーちゃん!」
 そして、キャッキャッとはしゃぐ宮川先輩と西幼女(せいようじょ)。
うん、実に微笑ましい構図ですな!
「あら、可愛らしい」
「本当ですね」
 姐さんや帰子さんもご満悦のご様子。
ほっこりとした笑顔で見守ってらっしゃる。
「スレイさん、こんにちは」
「ああ、こんにちは。
無事辿り着けて良かったよ」
 相馬さんが挨拶すれば、スレイさんは若干疲れた笑顔を見せた。
尚、何故に言葉が通じているかといえば、オレ達がバイリンガルとかではなく、紅いタヌキことパラえもんのお陰である。
流石、ツッコミどころ満載の人間を止めた紅いタヌキは格が違った。
 が、そのパラえもんの姿は無い。
はぐれたフラグなんです?
「パラケルススさんは、如何なさったんですか?」
「途中まで一緒だったんだけど、何だかね……」
 同じ事を思ったらしい神代先輩が問えば、スレイさんは表情を曇らせた。
「……何かあったんですか?」
 せーたろーも気づいた様子で、恐る恐るに問いかけた。
「うん、何かイイ薬があったとか言い出してね。
正直、物凄く不安なんだ」
 道理で、不安げな表情をしているはずだと皆納得した。
何せ、あのパラえもんである。
しかも、某双子は留守番をするのでとそそくさと逃亡したというフラグ付きだ。
「……ああ、それは不安しかないっすね」
 解ってはいたものの、オレのバケツプリンをそんな形で越えてもらいたくなかった。
「胃薬的なアレじゃないの?」
 姐さんが希望的コメントを出した。
「だけど、パラえもんってウッカリさんだし」
「アレで結構アレだってナッちゃん達も言ってました!」
 戻ってきた宮川先輩とシーリィちゃんが、それを打ち壊した。
なんということでしょう。
「えーと……それで、スレイさん達は何を?」
 相馬さんがやや引き攣った表情で問いかけると、スレイさんは手にした袋を見せた。
「シーリィはパンを推したんだけど、ナベってニホンのスープだろう?
どんなモノを入れればいいか解らなかったけど、パンはちょっとアレかと思って、牛すね肉とブーケガルニにしたんだ。
ブイヨン用みたいなモノですまないけど……」
「ああ、鍋って言われても解らないですよね」
 姐さんが相槌を打った。
確かに、あの場は勢いだけで推してしまったものの、世界の壁があったのを思い出した。
言語が通じるから忘れるんだよね。
「日本食に詳しい海外の方もいらっしゃるけど、それほど広く知られていませんしね」
 帰子さんに言われて、確かにそりゃそうだと皆も頷く。
そこら辺を思えば、流石スレイさん、草臥(くたび)れててもマトモな大人のチョイスだった。
「安心しました」
「うん、流石だよね」
「料理が解る男性ってイイね」
 皆もそう思ったらしく、頷いている。
「視線が痛いので止めて欲しいっす」
 バケツプリンがそろそろぬるくなってきた気もするし、オレはますます立場が無かった。
ちょっとだけ、パラえもんに期待した。
「さて、そろそろ時間だけど……あといないのは――」
 そして、スレイさんが辺りを見回した。
鍋の用意と諸々のセッティングは既に完了していたので、後は面子が揃えば始められる感じになっている。
しかし、一部の面子が未だ集まっていなかった。
「お笑い系のアイツと、月ヶ瀬さん親子がいないですね」
「あら、意外」
 せーたろーの発言に、姐さんが声を上げた。
にくったらしいアイツはともかく、あのイケメン親子がいないとは、確かに意外だった。
「開始時間までには未だ時間があるし、遅れる事は無いんじゃないかな」
「ええ、あの方達に限って、それは無いと思うわ」
 相馬さんと帰子さんが、さり気無くフォローに回った。
「それもそうですね」
 神代先輩がさっくりと同意した。
「おにくちゃんはともかくね」
 宮川先輩も真顔で頷いた。
「ナッちゃんのセンセーもアレだけどね」
 シーリィちゃんが何気に辛口だった。
総括すると、イケメン親子は信頼度もガチだったというアレ。
逆に、某界隈一のイケメンと紅いタヌキはもうちょっと頑張れよっていうアレ。
オレのバケツプリンはそろそろ許されそうで良かった。
「オウ! キチャッタゾー!!」
 と、噂をすればナンとやら。
奇妙な肉塊がにょろりと空間から沸いてきた。
「いやぁ、そこで逢ったから、一緒に来ちゃったよ」
 ついでに、紅いタヌキも出てきた。
「わぁ……」
 皆揃って生ぬるい笑顔になった。
「イイ薬が手に入ったよ。
コレを一振りすれば、どんなモノも途端にワインに!」
 そして、パラえもんが早速はっちゃけた。
貴方は、もっとシリアスなキャラであるべきでは無いでしょうか?
「未成年がいるのでダメです」
 そんな思いを籠めてか籠めないでか、スレイさんが一刀両断した。
「え」
「ダメです」
「でも、」
「ダメです」
「そこを、」
「ダメです」
「ナンとか、」
「ダメです」
 スレイさん、頑張って下さい。
「わー、パパ頑張ってー!」
 おお、応援がついた。
これなら勝てるよ、やったね!
「娘に飲酒など、この僕が許しません!!」
 おとんというよりおかんのような台詞を付きつけ、スレイさんの闘争心に火がついた模様。
「それなら、特製の薬を――」
「許しませんよ!!!」
 スレイさん、マジで頑張って下さい。
「で、オマエはナニ持ってきたの?」
 一方、にくったらしいアイツに、せーたろーがぞんざいに問いかけた。
何か口調がグレてるんだけど、如何したのあの子。
「オウ オレハ ザクロヲ」
 何故か、背後から出してきた。
妙に湿っていて、生温かかった。
何でや。
「柘榴って、高級品ではあるけど……」
「お鍋に合うかしら?」
 オレはあまりよく知らないけど、相馬さんや帰子さんはご存知らしく、首を傾げている。
「美味しいんですか!?」
 すかさず、宮川先輩が問いかけた。
「結構酸っぱい、かしら?」
「うん、栄養はあるけど酸っぱいから好き好きあるね。
食後の口直しには良いかもしれないけど」
「そうですか……」
 ちょっとしょんぼりした。
残念でした。
「ムウ ナベ ナンテ ヒサシブリ ダカラナ。
コレデモ ニンゲンデモ クエルモノヲ サガシタンダゾ」
 だが、意外や意外――ナマモノにしてはマトモな思考だった。
某界隈一のイケメンを謳うだけの事はあった。
「っていうか、鍋なんて喰えるの?」
 しかし、せーたろーがそうは問屋が卸さなかった。
「クエルサ!!」
 にくったらしいアイツは、シャウトした!
背後のクチから。
「肉塊のクセにナマい事を!」
「アウチ!! リフジンダゾ コゾウ!!」
 そして、せーたろーのコショウが、にくったらしいアイツに炸裂した。
ああ、このために持ってたのね。
納得した。
「だけど、あのお二人が未だなんて意外だね」
 そんな騒動をスルーしながら、相馬さんが遠い眼で口を切った。
「そうですよね、時間には厳しそうなのに」
 神代先輩も頷いた。
「何かあったのかしら?」
「月ヶ瀬さん親子なら、何かあっても大丈夫だと思うわ」
「「ですよねー」」
 帰子さんの心配は、姐さんの一言で杞憂に終わった。
オレと宮川先輩もぬるい笑顔で同意するしかない。
実際、あのイケメン親子はガチなので。
 尚、スレイさんとパラえもんの攻防は、未だに続いている。
せーたろーとにくったらしいアイツのじゃれあいも続いている。
このタイミングなら、もうバケツプリンは過去の物に違いない。
「……?」
 ――と。
何故だか、急に体感温度が落ちた。
いや、確かに落ちた。
気のせいじゃない。
「……すまない、遅れた」
 声色は、イケメン親子の息子さんの方だった。
だが、何故かずるずると重い物を引き摺るような音が続いている。
如何いう事なんです?
「時間には、間に合ったね」
 今度は、義父さまの方だ。
やっぱり、ずるずるという音が続いている。
というか……こっちに来てるんですが。
「……すいません、何か振り返ったらアカンふいんきがするんすけど」
 ええ、実は振り返ってないんです、オレ達。
「奇遇だな、俺もだ」
 神代先輩も重々しく頷いた。
「何だか寒いのよね、気のせいかしら?」
 姐さんも感じていたようで、安心しました。
「実は、私も……」
 ああ、帰子さんもそうでしたか。
「……お、音が近づいてるよ?」
 宮川先輩の声が震え出した。
「ええ、何でしょうね」
 せーたろーが死んだ眼でしらばっくれた。
「……何か変なにおいもするけど……」
 相馬さんが不吉な事を呟いた。
「パパ、此処は頑張って振り返ってみれば?」
 シーリィちゃんが無茶振りした。
「うーん、パパもうちょっと心の準備が欲しいな」
 スレイさんがさらっと回避した。
やりおる。
「何だい、皆。
振り返ったら死ぬ訳じゃないんだ、振り返ればいいじゃないか。
そう思わないか? にく君」
「ウム ソウヨナ」
「じゃあ、どうぞ」
 そう言うので、薦めた。
「どうぞどうぞ」
 他の皆も薦めた。
「……そこまで言うなら、振り返るよ」
「オウ イッテヤルサ!」
 無茶しても死にそうに無いので、特に見送りもしないまま、二人は振り返った。
そして、沈黙した。
「……それ、如何したんだい?」
 パラえもんが、そっと問いかけた。
「獲りました」
 息子さんが答えた。
ナニを?
「コレマタ タイリョウダナ!」
 にくったらしいアイツが、感心したように言った。
「うん、丁度良かったよ」
 義父さまが答えた。
何コレ、すっごい気になる。
「……えーと、一斉に振り返ります?」
「そうだな」
「うん」
「そうしましょう」
「じゃあ?」
「いっせーので」
「うん」
 好奇心に殺されるかもしれない覚悟で、オレ達は頷き合った。
「「いっせーので――!」」
 そして、振り返って――色んなモノを吹いた。
「「クマじゃないですかそれーーーーー!!!??」」
 それから、シャウトした。
「うん、獲れたてだよ」
 良い笑顔で義父さま――結さんが答えた。
イケメンのステキな笑顔に、ちょっと皆騙されそうになった。
「美味いぞ」
 息子さん――龍樹さんが答えた。
何故か頬に紅いモノが付いてて、ちょっと皆眼が合わせられなかった。
「な、なしてこのようなアレに……?」
 そして、オレはガッツを振り絞り、眼を合わせないままに問いかけた。
「いや、冷蔵庫に何も無かったから、現地調達しようと思ってね」
 オレと同じ状況で、何でこんな有様に。
「準備を終えたら、丁度熊が通りかかったのでな。
狩る事にした」
 嗚呼、ダメだこの人達、ガチ過ぎる。
出遭ってしまった熊は、まさに悲劇だった事でしょう。
「……ご丁寧な解説、ありがとう」
 パラえもんが乾いた笑顔を浮かべていた。
人種的なおかしさはパラえもんの方が上だけど、戦闘力的なおかしさはこの親子の方がアレだった。
 尚、熊の大きさは、丁度オレくらい。
小さめといえば小さめけど、ボディが肉厚な野生の獣のそれで、オレのようなもやしとは違っていた。
オレが遭遇していたら、ガチで泣いて命乞いをしていた。
「……で、でも、よく無事でしたね?」
 相馬さんの笑顔が引き攣っていた。
「熊すら狩れずして戦闘員などと名乗れば、失笑を買うので」
 龍樹さんが、そりゃもう真顔でぶっちゃけた。
眼もずっしりと据わっていた。
チビるかと思った。
「うん、ウチではよくある事だよ。
むしろ、嬉々として狩りに出るくらいだしね」
 結さんが、そりゃもうステキな笑顔でぶっちゃけた。
ソレ何てデストロイ集団なんです?と思えども、口には出せなかった。
考えるのも止めた。
「お二人的には日常なんですね、解りました」
 神代先輩が視線をガッツリ逸らしながら乾いた笑みを浮かべていた。
「で、美味しいんですか?」
 しかし、宮川先輩はビックリするほど平常運転だった。
「美味しいよ」
「地域によっては、高級品だ」
 二人とも、さっくりと答えた。
「「ヒャハーーーーーッ!!」」
 そして、宮川科とにくったらしいアイツのテンションがだだ上がりした。
何なのこの子達。
「……お肉、好きなのね」
 帰子さんの視線が遠かった。
「完全に食欲の方が上なんですね」
 せーたろーの視線も冷め切っていた。
「え? あーちゃんとにくちゃんって、そういうキャラだよ?」
 シーリィちゃん、それは言っちゃいけない。
「……彼等を怒らせないようにしよう」
 パラえもんが、ひっそりぼっそりと呟いた。
「……私も後で熊の倒し方でも習おうかしら」
 姐さん、貴女はナニをなさるおつもりですか?
「……えっと、ところでコレは如何するんですか?
このままだと、食べれませんが……」
 そこで、スレイさんが尤もな事を口にした。
流石、出来る大人は違うと思った。
「ええ、今から捌きますので、少々お待ちを。
龍、手伝ってくれ」
「了解」
 手馴れてらっしゃるご様子で、お二人は颯爽と熊を引き摺りながら物影に消えていった。
皆が皆、無言でそっとその後ろ姿を見送った。
そして、オレはすっかりと生温くなったバケツプリンを、そっとクーラーボックスの中に突っ込んだ。

***

 ――その後、ホラー映画のブッチャーさんもご用達かと思わせるような包丁と肉ブロックを手にお二人が戻ってきた時は、殺られるフラグかと若干チビったものの、鍋自体は普通に始まった。
 宮川科とナマモノとウッカリ魔術師の暴動が懸念されたものの、鍋奉行を龍樹さんがしていたのでそれも無かった。
多分、本能的にダメだと理解したんだろう……と、神代先輩が悟った表情をしながら黙々と食べていたのに、オレは同情した。
そして、密かにせーたろーが舌打ちしてコショウをそっと懐に仕舞っていたのを、オレは見なかった事にした。
ただ、スレイさんが時々厳しいおかんのような眼でパラえもんを見ていたのは、微笑ましいと思った。
 尚、熊肉はマジで非常に美味しゅうございました。
何ていうか、脂身もクセもそんなに無くて、幾らでもいけちゃう系お肉って感じ。
女性陣にも好評で、最初の熊狩りインパクトが薄れるくらいに和気藹々と和やかに鍋を突付けた。
 あと、例の柘榴はデザートとして頂いた。
身体に良い感じで酸っぱくて、宮川先輩が梅干ばあさんのような顔になっていた。
実に残念な女子だった。
「いやぁ、大変美味しゅうございました!」
 やっぱり、今日は来て良かった。
バケツプリンで空腹を満たしていたら、きっと今頃泣いてた。
「最初はビックリしましたけど、ホントに熊って美味しいんですね」
 食後のお茶をすすりながら、姐さんがしみじみと言った。
「ウチでは、熊が狩れたらちょっとした宴会になるからね」
「肉の獲り合いになる程度に」
 結さんと龍樹さんが、平然と言った。
この人達、どんだけガチな職場にいるんだろう。
「……さぞ、凄まじい光景なんでしょうね」
「想像しただけで、血の気が引きそうです……」
 神代先輩とせーたろーが、お茶を片手に死んだ眼でぬるく笑った。
「でも、お肉のためなら闘わないといけない気持ち、解るなぁ」
「ウム ヨノナカ ドコモ ジャクニクキョウショクヨナ!」
 肉食系は、人生楽しそうで何よりです。
草食系もやし男子としては、リアル弱肉強食過ぎて怖いんだけど。
「……何だろうね、この不思議な親近感」
「ええ、本当ね……」
 相馬さんと帰子さんが、何故か憧憬を含んだ遠い眼をしていた。
色々あった模様。
「パパは、無理しなくて獲らなくて良いからね?」
「うん、ありがとう。
でもパパ、そもそもクマに遭っても闘えないよ」
 スレイさん親子は、マイペースのようです。
そんな和やかな雰囲気の中、そろそろ日も暮れてきたしお開きにしましょうかという空気になった頃、パラえもんが手を打った。
「あ、そうそう。
クーラーボックスにプリンが入ってたから、手を加えてみたんだ。
美味しくなったはずだよ」
「えッ」
 すっかり忘れていた事だった。
此処で、オレのバケツプリンを掘り返されるとは思わなかった。
「はい、どうぞ」
「‥‥‥」
 そして、皆の前に出されたのは、オレの旧バケツプリン――現黄色い物体Xだった。
共通点は色艶くらいで、喰える感じはまったくしない。
というか、何故か蠢いててキモい。
「パラケルススさん、合体事故ですか?」
 結さんが眉一つ動かさず、何事も無かったように問いかけた。
流石だった。
「いや、普通にプリンだよ?」
「プリンというのは、こんな蠢いた謎の物体Xじゃないっすよ!!?」
 流石に、オレは反論した。
「そうだよー、こんなプリン無いよー!」
 シーリィちゃんもプリプリと怒った。
あら可愛い。
「そうですよ、何処にこんなプリンがあるんです!?」
 そして、スレイさんのおかんスピリッツも爆発した。
「折角のプリンが台無しなのはいけないよ!!」
 宮川先輩の謎の怒りも爆発した。
「お前の場合、そのままでも喰えるんじゃないか?」
 そして、神代先輩が投げ遣りに言った。
「えー、流石に食べれないよー」
 そう言いながらも、その視線がチラチラと物体X化したプリン?に注がれている訳ですが。
「……で、何をしたんです?」
 龍樹さんの眼が据わっていた。
何時の間にか、例のブッチャー包丁を持ってらっしゃる。
怖い。
「え、特製の薬をちょっと加えただけだよ」
 諦めてなかったとは、違う意味で見上げたガッツだった。
しかし、周囲の視線は冷ややかなもので。
「……ダメな薬だったんじゃないですか?」
 姐さんがジト眼で問い返した。
嗚呼、スレイさんが全力で止めてくれて良かった。
「あの、元に戻せないんですか?」
 そして、相馬さんが最後のワンチャンを提案した。
「それなんだけどね、中和剤を持ってきてなかったんだ」
 やっぱりダメだな、この紅いタヌキ――という雰囲気が周囲に立ち込めた。
「……えっと、プリン?がそろそろ容器から出そうなんですが……」
 その最中、帰子さんがそっと発言した。
確かに、うごうごと蠢く黄色い物体Xが容器から溢れそうになっていた。
キモい。
「ジャア オレガ チョット クッテヤロウ」
 と、静観していたにくったらしいアイツが徐にプリン?をぶちりと引き千切り、何故か背後にあるクチに入れた。
っていうか、プリンって引き千切るモノじゃないよね。
「‥‥‥」
 色々ツッコミどころはあったものの、オレ達はその肉厚ボディを見守った。

 ボフンッ!!

「あ、爆発したね。
クチが後ろにあって良かったよ」
 結さんが、相変わらずの冷静さで言った。
「味は?」
 宮川科霊長目さんは、そろそろ自重して欲しいと思った。
「あーさ、ステイ」
「ひでぶッ」
 それは、ステイという名のアイアンクローでした。
でも、これで安心だね!
良かった良かった。
「で、如何なの? ウマいの? マズいの? 死にそうなの?」
 せーたろーが、つとめてぞんざいに問いかけた。
一体、一人と一匹の間に何があったんだろう?
尚、この間もにくったらしいアイツの背後にあるクチからは煙が出ております。
「ウマイ!!!!」
「何でや!!?」

 思わず、オレは全力でツッコミを入れた。
「そうだろう、そうだろう」
 パラえもんが得意気な顔をしているけれども、皆の表情は胡散臭げだった。
「あの、ナマモノさんと私達はそもそも種族が違いますからね?」
 姐さんが良い事言った!
流石、オレ達のANEGO!!
「そうっすよ、ナマモノじゃないっすか!!」
 オレも便乗した。
「そうだよ! ちっとも美味しそうじゃないよ!」
 シーリィちゃんも猛然と抗議した。
「娘には、絶ッ対に食べさせませんからね!?」
 スレイさんは相変わらずの親馬鹿だった。
「うん、食べろって言われたら、流石に全力で拒否するね」
 相馬さんも漢前な表情で頷いた。
「ええ、爆発が起こるようなモノはちょっと……」
 帰子さんも困惑顔で呟いた。
「……如何する?」
 そして、事の成り行きを冷静に見ていた龍樹さんが、結さんに振った。
確かに、この惨事を収拾してくれそうなのは、この人くらいだ。
 皆の視線を受け、結さんは暫く考えた後で、無言で席を立った。
何故だか、気温がガッツリ下がった気がした。
「あ、あの! 結さん、オレがバケツプリンを持ってきたばかりに、申し訳なく思うっす!
でも、悪気は無かったんす!!」
 その空気に耐えられず、オレは渾身のジャンピング土下座で白状し、謝罪した。
このまま黙っていたら、オレのメンタルがおぼろ豆腐になる気がした。
「おや、そうだったのか。
でも、やらかしたのは彼だからね。
持ってきた君は悪くないよ」
 そうして返ってきた返答は、ご慈悲に満ち溢れていた。
嗚呼、白状して良かった!
「やったね、シノメくん! 許されたよ!!」
「オレやったよ、せーたろー!!」
 オレとせーたろーは、思わずガッチリと握手した。
「あたしは、何時許されるのかなぁ……?」
因みに、未だに宮川先輩はガッチリと頭をステイされております。
神代先輩、忘れてるんじゃなかろうか?
 そんな悲喜交々を他所に、結さんは冷静にプリン?を眺めた。
「では、こうしよう」
 そして、プリン?が入った容器を手に取り――。
「にく殿、未だ食べられるね?」
 実に優しく問いかけつつ――。
「オウ」
「では、よろしく」
 容器ごと、一気にそのクチにぶっ込んだ。

 ドブボフンッ!!!!

「オフゥ~~~」
 物凄い音を立て、にくったらしいアイツの背後のクチから煙が噴水のように吹き出た。
そりゃもう、スゴい勢いで吹き出た。
しかも、煙が紫色だった!
何処から出たんだよ、その色!?
「コンナ ハゲシイノ アノトキブリ……」
 ……だが、そんな謎の物体Xを喰らったアイツの表情は、何故か恍惚としていた。
ホントに何でだよ!!?
「あーあ、全部食べさせちゃったのかい?」
「では、パラケルススさんもどうぞ」
 残念そうな顔をするパラえもんだったが、結さんは何処に残していたのかプリン?の塊をその口に放り込んだ。

 ポムンッ!

 やっぱり爆発した。
ただ、軽い音だけでコレといった変化は起きなかったものの、パラえもんはフリーズしたまま倒れ込んだ。
無茶しやがった結果がコレである。
「うん、やっぱりダメだったね」
 そして、何事も無かったように、結さんは席に着いた。
お見事でございます。
「解っていた事ではある」
 龍樹さんも、相変わらずドライだった。
ブッチャー包丁は、何時の間にか消えていた。
「まぁ、見るからにアレでしたからね」
 言いながら、やっと神代先輩はステイしていた手を離した。
忘れてはいなかったみたいで安心しました。
「お、おぐぅ……しーやクン、あたしの頭を潰す気だったね?」
「ソンナコトハナイ」
 棒読みだった。
「あの筋肉から繰り出されるアイアンクロー、さゆきさんとどっちが強いかな?」
 せーたろーが命知らずなコメントを要求した。
「……オレ、ノーコメントで」
 命は大事にしたいと思ったので、オレはコメントを控えた。
「ナッちゃんのセンセー、生きてますかー?」
 そして、シーリィちゃんがツンツンと枝切れでパラえもんを突付いた。
しかし、返事が無い。
ただのパラえもんのようだ。
「……大丈夫かしら?」
「うん、ホントにさっきからピクリともしないね……」
 帰子さんと相馬さんもパラえもんを覗き込むものの、確かに動く気配が無い。
うつ伏せなので表情は解らないが、ナイスダンディ台無しな感じになっているに違いなかった。
「ナマモノさんは大丈夫そうだけどね」
「ウフフフフフ~」
 姐さんの視線の先では、にくったらしいアイツが千鳥足でフラフラと悦っていた。
キモい。
「さて、そろそろお開きにしようか」
 そして、結さんが何事も無かったように口を切った。
「そうっすね。
でも、パラえもんは如何するんすか?」
 そこで、オレは流石に心配になって聞いた。
「パラケルススさんは、助手の双子に引き取りに来て頂こう。
龍、連絡を頼むよ」
「解った」
 何時連絡を交換したのか解らないものの、結さんならしょうがない。
龍樹さんも普通にスマホを手にして去っていった。
今時のホムンクルスは、現代機器も使えるらしい。
「それなら、パラえもんも大丈夫そうだねぇ」
「元々、人間止めてるから大丈夫だと思いますけど」
 宮川先輩とせーたろーの温度差がひどい。
「セイタロウ、結構辛口だよな」
「ええ、たまに激辛っすよね」
「元々なの?」
「まぁ、時々……?」
 神代先輩に同意しつつ、姐さんの問いかけに茶を濁した。
「後は、皆で後片付けをしよう。
あぁ、あさねさんとにく殿は愁夜さんとセイタロウさんが見ていてくれるかな」
「えッ?」
「ン?」
「了解しました」
「お任せ下さい」
 流石結さん、言わずとも安全策を押さえてらっしゃる。
神代先輩とせーたろーも心得たものだった。
「……シーちゃんは良いのです?」
 しかし、宮川科が反論を述べた。
「わたし、お料理出来るよ!」
「掃除も僕より上手いよ」
「残念ながら、シーリィちゃんの圧勝っすわ。
あ、オレも家事は多少出来ますんで」
「クッ、シィット……!!」
 崩れ去る好敵手を前に、オレは勝利を噛み締めた。
運動能力ではてんで敵う気がしないが、知能と器用さなら負ける気はしなかった。
「あーさ、行くぞ」
「解ったよぅ」
「さ、オマエもこっちだからね」
「オッス オッス」
 そうして、はけて行く3人と1匹。
「……あの子達も大変ね」
 その背を見送り、姐さんが呟いた。
「そうっすね」
 オレも他人事のように頷いた。
「じゃあ、片付けましょうか」
「うん、そうしよう。
ゴミ袋は、そこにあるからね」
 そして、相馬さんが苦笑しながら促せば、結さんも頷いた。
「あ、私が持ってきます」
 そうして、帰子さんがゴミ袋を取りに行くなり、龍樹さんが戻ってきた。
「もう三十分くらいしたら、引き取りに来れるそうだ」
「ありがとう。
スレイさん親子も、彼等と帰宅されれば良いでしょう」
「はーい!」
「そうですね、助かります」
 ある意味、パラえもんと一番親しい間柄ではあるものの、そのイベントフラグは折れているようで触れられる事は無かった。
本編のシリアスさとか、そんなモノも無かった。
それはそれ、これはこれというアレですね、解ります。
「あ、龍樹さん、後で熊の倒し方を教えてくれます?」
「良いですよ」
 そして、姐さんが物騒なスキルを入手しようとしていたが、オレは聞かなかった事にした。
大体、その矛先は弟のタクくんに向かうはずなので、オレはタクくんの身を案じた。

***

 ――そして、片付けも済んだ後。
先ず、ホムンクルス双子がやってきて、ぞんざいにパラえもんを引き摺りながら、スレイさん親子と共に帰っていった。
次に、せーたろーに追い払われるようにして、にくったらしいアイツがにょろりとあらぬ世界へ戻っていった。
そして、リア充カップルがほっこりと帰り、姐さんはオレ達と途中まで一緒に帰る事になった。
 尚、イケメン親子はといえば、もう一狩りしていくと物騒な事を言って、山の奥へと入っていった。
野生動物の皆さんのご健闘をお祈りします。
「帰ったら、タクで試してみないとね」
 そして、姐さんが指を鳴らしながら言った。
嗚呼、例の熊殺しを会得してしまったのですね。
タクくんの死亡フラグが、ガッツリと立った瞬間だった。
 オレは、思わずメールを送りたくなったものの、後が怖かったので止めた。
そんなオレの肩を、せーたろーが優しく叩いた。
「……大丈夫、タクくんだもん」
「お、おう……」
 謎の根拠だったけど、オレはただ頷いた。
というか、これ以上触れたくなかった。
 オレのもやしボディでは、姐さんの打撃を喰らおうものなら憤死モノなのは解っていた。
嗚呼、オレにも神代先輩並の筋肉があれば!
「如何した? 飢えたハムスターみたいな眼で見て」
 飢えた視線を向けていたら、神代先輩がきょとんとして問いかけてきた。
「……何でもないっす……」
 草食系もやしハムスターは、咽び泣くしかなかった。
「……ところでさ」
 そして、不意に宮川先輩が何時に無く真剣に口を開いた。
そういえば、随分静かだった気がする。
「如何したよ」
 神代先輩も茶化さずに先を促した。
「龍樹サンも結サンも手ぶらだったけど……そういうアレなんです?」
「‥‥‥」
 そう言えば、そうだ。
包丁を装備したのは、狩ってからだ。
運んできた時は、確かに手ぶらだった。
「え、大丈夫でしょ? 龍樹さん、素手で潰せるって言ってたし」
 その知りたくなかった真実について、姐さんがさらっと答えた。
「実際、潰してたもんな……」
 横で、神代先輩が真顔で呟いた。
「……ソウデスネ……」
 オレとせーたろーも頷いた。
「……えっと、結サンは?」
 そして、宮川先輩が更に問いかけた。
もう止めて!オレのガッツが尽きそうよ!!
「龍樹さん、結さんには勝った事が無いって言ってたし、大丈夫よ」
 姐さんは、無情にもあっさりと答えた。
そんな事、知りたくなかったよ!!
「サーチアンドデストロイな龍樹さんより強いとか、何なんです!?
実はラスボスなんです!!?」

 オレは、思わずシャウトした。
「この山の野生動物が絶滅しないとイイね……」
 せーたろーが、生気の無い笑顔で更なるフラグを立てた。
野生動物の皆さん、逃げて! 今すぐ逃げて!!
「……あーさ、お前ももうちょっと自重しような」
 そして、神代先輩が生温かい眼で優しく言った。
「……ソウデスネ」
 宮川先輩も素直に頷いた。
野生に近い宮川科なので、本能で察したらしかった。
 そして、オレ達は大いなる悲しみと多少の喜びを交えながら、家路に着いた。
気になって、後からタクくんに当たり障り無い様子見のメールを送ったものの、返事は未だに来ていない。
嗚呼、これはダメかもしれんね。

 ――その夜。
オレは、タクくんと一緒にプリンIN熊鍋を泣きながら食べる夢を見た。
イケメン親子にデストロイされる夢じゃなくて良かったと安心した。

***

5万HIT御礼にしてはヒドいなって自分でも思いました。
ですが、新作も大体こんなノリです、すいません!
終わりに、長くなって申し訳アリマセンでしたorz
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旬の花時計
プロフィール

KUROZ

Author:KUROZ
黒いまめっぽいナマモノ。
最近、珈琲がうめぇ。
禿げ散らかすのが気になるお年頃。
まめっぷ。

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