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一日でざっくり書いた小話

何かフラスコ関係のアクセスが多いので、という事も無いのですが、何と無く書きたくなったので書きました。
フラスコのゆめ・はてをクリアしてからの閲覧を禿しく推奨いたします。
尚、某魔術師の過去と、ゆめとはての間くらいの小話です。
暗く鬱めの話なので、ご注意下さい


興味のある方のみ、折り曲げからどうぞ。

 
※無断流用・転載厳禁です。


比翼のゆめ

※第三者視点です。

***

 ――彼は、その日までは、確かに片羽だった。

 彼は、至極普通の家庭に生まれた。
何処にでもあるような名を付けられ、何処にでもあるような環境で育った。
特に起伏も無い日常の中で、他人と同じように生きてきた。
 ただ、他人と違うとすれば――彼が、非凡だった。
ありふれた世界の中で、彼だけが違っていた。
白い紙に落とされた黒いインクの飛沫(ひまつ)のように。
 ……そう、彼は幼くして異物だった。
当たり前のように、大人でも解けない難解な問題が解けた。
当たり前のように、視えるはずの無いモノが視えていた。
幼かった彼は、それをうっかりぼろぼろと曝け出したがために、異物とされた。
 特異である事は、果たして幸運か?不運か?
その答えは、ヒトによって様変わる。
どれが正解かなど、そんなモノは無い。
ただ、彼にとっては後者だった――それだけだ。
 そして、幼いながらも異物である事を自覚した彼は、ぼろりと崩れた己の心の破片で線を画(えが)いた。
異物と見られ、後ろ指を指され、嘲笑される度に、ぼろぼろと崩れていく心の破片で線を画いていった。
そうやって、線を画き続けていき、気づいた時には、己と周囲はぽっかりと切り離されていた。
(嗚呼、哀しいな)
 ぐずぐずに砕けて落ちた心の破片達を見下ろして、ただ薄っぺらな台詞を零した。
狂っているというのならば、既に狂っているのだろう。
彼はただ、ひっそりと涙一つも流せずに、己を憐れんだ。

 ――それから、十数年後。
彼は、人間社会に溶け込むように、優れ過ぎず劣り過ぎずにひっそりと独りで生き続けていた。
そんな彼が足を踏み入れていたのは、医学の道だ。
何故、医学の道を選んだのかなど、彼自身も解らない。
 解らないままに、医学の道を歩んで――一人の女性と出逢った。
それは、転機の訪れだった。
「ねぇ、貴方は何時も一人ね」
 彼女は、彼と同じ医学大学で同期だった。
勝気でジョークの上手い、気遣いの出来る彼女は、大学では人気者だった。
 だが、当時の彼は、既に冷めきっていた。
異物であったため、人間の皮を被って長く生活していたから。
砕けてぼろぼろになった心の破片もまた、今はもう彼方此方に飛び散って見る影も無い。
 今も昔も、彼は周囲と線引きをしたままだった。
だから、特に何の感慨も無く、彼女の言葉にも記憶にすら残らない程度の相槌を返した。
 しかし、それが彼女の興味を引いてしまったらしい。
それからというもの、顔を合わせる度に彼女は彼を誘った。
勉強は勿論、食事や休暇でさえも、まるでつれない夫に世話を焼く女房のようだと揶揄されるほどに。
 だが、彼はそれでも、特に心境に変化が起こる事も無かった。
一度砕けた心は、元には戻らない。
粉々にまでなれば、それは当然の事だった。
その足元の線は、相変わらず彼と周囲を隔て続けた。
 しかし、彼女は諦めなかった。
大学を卒業した後も、医師となった後も。
ただ、彼女は彼と共に在り続けた。
 愛ではない。
だからといって、恋でもない。
ただ、番(つがい)の翼が無ければ飛べない鳥のような――或いは、そんなモノだった。
 彼女と在ったその日々は、確かに片羽しか持たなかった彼にもう片方の翼を与えた。
それまで線だらけだった彼の周囲に、ほんの少しの隙間を与えて入り込んだ。
彼女は、確かに彼にとっての、片羽だった。

 ――やがて、熟年を越えた頃。
彼が、また片羽に……真にヒトを棄てる日が来た。
 その日、彼女は機嫌良くマザーグースの歌を歌っていた。
ハンプティ・ダンプティの歌だった。
何気無く紡ぎだされたその歌の意味に、彼は気づけなかった。
 ……そして、彼女は帰らなかった。
事故だった。
車道に飛び出した猫を庇って、即死だった。
 物言わぬ冷えた骸となった彼女を前に、彼は初めて一粒だけの涙を流した。
そして、音も無く……その背から、羽が散った。
 ――それから、彼は医師の道をも踏み外した。
元より、異物として扱われ続けてきた彼にとって、それは然したる問題ではなかった。
だから、ただひたすらに貪欲に知識を求め続けた。
そうして辿り着いた先が、たまたま魔術だった。
 抵抗は、無かった。
むしろ、それは求めていた知識だった。
それから彼は、数多の魔術書を読み解き、幾度も実験を繰り返した。
 ……気がつけば、何時しかヒトとしても道を踏み外していた。
それもまた、彼にとっては如何でも良い事だった。
ただ、人間の皮を棄てただけだという、その程度でしかなかった。
 ――彼女を愛していたか?
前ならば、彼は否と答えただろう。
だが、今ならば……彼は頷くだろう。
 彼女は、そういう存在だった――そう、気づいた。
喪ったからこそ、無かったはずの翼があった事に気づいた。
だからもう、飛べなくなれば地に落ちるしかない。
彼には、翼が片方しか無いのだから。
 ヒトとしての名も要らない。
ヒトとしての肉体も要らない。
だから、棄てた。
異物としての生を受け入れた。
「嗚呼、哀しいな」
 そして、彼は今度こそ感情を籠めて口にした。
彼の前には、彼女になるはずだったナニかが蠢いていた。
あの日、彼女が歌った歌のように、彼女は元には戻らなかった。

 ――彼は、その日からまた、片羽になった。

***

「……い、……んせい、先生!」
「――、」
 小さな手に揺り動かされて、彼は眼を覚ます。
「もう、やっと起きましたね」
 目の前には、見慣れた呆れ顔があった。
「……あぁ、おはよう」
 ぼんやりとした頭で挨拶をすれば、助手の人工生命体――彼女になるはずだったナニかだった彼等が、盛大に嘆息を吐いた。
「もう夜ですよ、センセー」
「ホント、先生は眼を離すと、すぐコレなんですから」
「ああ、すまない。
ちょっと休むつもりだったんだが……懐かしいゆめを見たからかな。
眠り込んでしまったよ」
 小言を口にする小さな彼等に、彼はかつてでは考えられないほどに自然に笑った。
最初は、彼も彼等をただのナニかとしか認識していなかった。
言うなれば、失敗作――けれど、彼等が彼女の血肉から構成された生命であったのは事実。
だから、彼等を排除する事が出来なかった。
 そうして育てようとしたのは、かつてのヒトだった名残か。
または、神に対する懺悔か。
或いは、彼女を喪って開いた隙間を誰かに埋めてもらいたかっただけか。
 解らない。
解らないが……彼は、気紛れから彼等を育てた。
そして、その気紛れが何時しか奇跡を彼に与えていた。
そうして、今に至る。
「ゆめですか」
「珍しーですね、センセーがゆめを見るほど眠るなんて」
 思いに耽る彼の耳に、世間から見れば異物としか見られぬだろう小さな彼等の声が届く。
仮初であるはずの彼等は、けれどもヒトと同じように感情を持ち、感情を理解する。
それは、彼と至極良く似た存在足り得た。
世間からは許されず、けれども確かに生きていた。
「……ああ、ゆめなんて久し振りだったよ」
 永く、生きた。
彼等と共に、永く生きてきた。
時代を渡り、異界を巡り――ヒトとの間に線を引いたままに。
 今も尚、彼は片羽のままだ。
けれど、今はもう、独りではない。
飛べないまでも、共に生きていく事は出来る。
それを、漸く悟り――今が在る。
「……君達が生まれた時のゆめだった。
今はもう、色の褪せた……淡い泡のようなゆめだよ」
 けれど、大事な想い出だ。
彼女は、今も昔も変わらず、唯一無二で在り続けている。
今も尚、あの頃のままで、彼の胸の奥で笑っている。
 あの時、彼女は彼に『何時も一人ね』と声をかけた。
その時に何と答えたかは、未だに思い出せない。
だが、心の底からただ思う。
独りで生きるのは、哀しいと――。
 だからこそ、妻と娘を喪い、弟子入りを望んだ男の気持ちは、よく理解出来た。
ひどく歪んでひどく気味の悪い眼をしていようとも。
それは、あの頃の己と同じ眼であったのだから。
 止めるべきが、まさしく人情だったのだろう。
だが、彼には出来なかった。
幸せにはなれないと知りながら、それでも――。
「……ゆめは、覚めるものだ。
ゆめのままでは、いられない」
 彼は、小さな頭に手を伸ばし、ゆるく撫でる。
「しかし、だからこそ――ヒトは、ゆめを求めてしまう。
嗚呼、哀しいね」
 そして、誰にともなくひっそりと自嘲した。
「……先生は、後悔していますか?」
 何を、とは問わない。
彼はただ、そっと眼を伏せた。
「……後悔をしていないといえば、嘘になるね。
けれど、私はこれで良かったと思っているよ」
 己の事も、彼等の事も。
巻き込んでしまったあの親子には申し訳無かったが、己が手を下すより余程良かった。
だから、腹の底から後悔していないと言えば嘘になるが、あの時よりは確かに後悔していなかった。
「お前達の事も、私達にとっては息子のようなモノだからね。
後悔など出来ないよ」
 伏せていた目蓋を開ければ、驚いたように眼を瞠る二つの顔が見えた。
その様子に思わず眉尻を下げれば、はっとしたように彼等は視線を逸らし、泳がせた。
「……センセー、意地悪だね」
 そうして、吐かれた可愛らしい悪態に、彼はまた笑う。
あの頃に、こんな風に笑えたなら良かったのにと思いながら。
「そうだね、私は――欠けてしまっているからね」
 今も昔も欠けたまま、飛べぬままに生きている。
感情を取り戻したようでいて、本当のところはそんなフリをしているだけかもしれない。
けれども、あの頃の彼女のように笑みを浮かべ、生きている。
そうする事で、生きている。

 ――彼は、片羽を喪った代わりに、確かに生きる意味を得た。


***


ふと思いついたので、カッとなって書きました。
文才が無いのは何時も通りなので、さらっと深く考えずに読んで頂ければ幸いですorz
そんなこんなで、今ではすっかりネタキャラなパラえもんですが、何だかんだで色々あったというアレです。
アレでアレなのも、本人としてはガチで頑張った結果なんだろうなと思うと、見方も変わるかもしれません。
彼に限らずですが、思い返せば所謂チート枠の面子は大事な相手を喪っていますね。
喪うばかりではない感じにしているつもりですが、モノの見事に満身創痍です。
やっぱりまめ野郎は厨二だな!としょうもないオチをつけないと笑えない感じが、実にまめらしいですね。

余談にて。
元々こういった暗めの話の方が書き易いので、チート枠の面子はネタが豊富にあったりしますが、誰得だよと言われそうなので控えています。
良いから書けよ!って言われれば、解ったよ書くよ!ってなるかもしれません。
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KUROZ

Author:KUROZ
黒いまめっぽいナマモノ。
最近、珈琲がうめぇ。
禿げ散らかすのが気になるお年頃。
まめっぷ。

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