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鏡花水月・続編コンセプト小話

今年の初めくらいにちょろっと殴り書いていた鏡花水月・続編のコンセプト的小話です。
続編は愁夜が引き続き主人公を続投しますが、一方で裏方に回っていた彼等の存在が重要になるため、導入部は彼等の視点から書くべきかと思ったために出来た代物です。
ただ、あくまで仮の状態であるため、本編ではまた変更されるのを前提としてお読み下さい。
ノベルの場合は雰囲気重視でこういったテキストに画像と演出が入りますが、ADVの場合は雰囲気よりテキスト削減・プレイし易さ重視でこういった演出は大幅カットになるので、その辺りの加減が難しいところ。

尚、ゲーム・鏡花水月クリア済み、ブログ内のアンケート1、2位の小話の閲覧後を禿しく推奨いたします。
折り曲げからどうぞ。

 

※無断流用・転載厳禁です。

前兆


※龍樹視点です。

***

 それは、正しく晴天の霹靂(へきれき)だった。
「話したい事がある」
 朝食を摂り、片付けを終えた後で、何時も通りの声色であの人――結さんは口を切った。
その時感じた神経を焦がすような胸騒ぎは、確かに予感だったのだろう。
「先ずは、これを読んでくれ。
聡いお前の事だ、それで大体は飲み込めるだろう」
「! こ、れは――」
 テーブルの上に音も無く乗せられたのは、血を思わせる深紅の封筒。
既に解かれた封緘(ふうかん)に使われている刻印に、自ずと言葉が詰まった。
同時に、血の気が音を立てて引いていった。
 ……忘れもしない。
そもそも、忘れようが無い。
この兎の形をした封緘の刻印は、俺とこの人にとっては呪いの烙印も同じ。
 俺の大切な家族を……結さんにとっては唯一無二の親友を奪った元凶が寄越したモノによく似たソレは、あっという間に思考の一切を焼き払っていった。
「……な、ぜ、こんな、モノが?」
 その思考も視界さえも焼くような深紅に視線を縫い付けられながら、渇いた咽喉から搾り出すように問いを投げた。
目の前に座る養父であり、恩人であり、師であり――俺の実父の親友であった人へと。
「先ず、中を見るといい。
話はそれからだ」
 しかし、結さんは奥底の見えないひたりとした眼差しのまま、淡々と告げた。
「――」
 本能的に、背筋を寒気が這った。
その腸(はらわた)の中にどれだけの思いをひた隠しているのか、まるで想像がつかない。
 だが、ぞっとするほど情の見えない様相を見れば、穏やかではないと解る。
特に――果てなく凪いでいるようで、果てなく冷えて凍えているその双眸は、見ていると臓腑まで冷えていくような錯覚さえ覚えさせた。
 この人は、基本的に喜怒哀楽を表に出す事など滅多に無く、隠す事も実に巧い。
しかして、感情が無い訳ではない。
ただ……誰よりも感情を捻じ伏せる事に慣れてしまっただけで。
「‥‥‥」
 一度、目を伏せて少しばかり意識を落ち着かせる。
この封筒が、かつてのあの『ゲーム』に関係している事は明白だった。
ならば、その中身も――。
(……もう二度と、関わる事は無いと思っていたのに)
 腹を決めて、テーブルの上の封筒へのろのろと手を伸ばし、掴む。
かつては狂喜で、今は反吐が出るような気持ち悪さと嫌悪で、指先が無様に震えた。
 時間をかけて、ゆっくりと封筒を開き、中を見る。
中には、血にも似た色の封筒よりも更に暗い色合いの紅いカードと、真っ黒なカードが一枚ずつ。
見ただけで、破り捨てたい衝動に駆られた……が、必死に押し留めて暗く紅いカードを取り出し、その文面を認識する。
 一字、二字、三字、四字――書き出しは、宛名。
二度と使う事など無いはずの名が、そこに機械的な文字で印字されている。
 それから、二行目。
丁寧ながらに理不尽で嫌悪感しか感じられない招きの文章が、一文のみ。
 最後は、差出人の宛名。
かつての仇敵を否応無しに思い出させる名で、それは締め括られていた。
 無駄に無為な時間をかけ、カードの文字を全て認識し終えた後には、多大な遣る瀬無さと、積もるような疲労と疑問だけが残った。
視界にこびりついた深紅が、実に忌々しかった。
 もう一枚は、取り出す気力も無く傍から眺めるだけに留めた。
如何やら、開催地への地図らしいが、詳細を確認する余力が無い。
カードを封筒に戻し、テーブルに戻すのでやっとだった。
 ――沈黙が、落ちる。
視線を上げるのも億劫で、テーブルの木目を意味も無く数えて気を紛らわせた。
口を開こうにも、咽喉の奥が干からびたかのように音が出てこない。
ヒュゥ、と妙な音が歯列から漏れ出ただけで、音にならずに掻き消えていった。
「『レッドラビット』は、もういない。
私とオマエにとっての仇敵であったあの男は、今はもうただの抜け殻でしかない」
 代わりに、結さんが沈黙を破った。
微かな揺れも無い、しっかりとした口調だった。
 この招待状を初めに見たこの人は、一体どんな反応をしたのだろう。
だが、思い返しても今までにその様子がおかしい事など無かった。
至って、何時も通りだった――今思えば、異常なまでに。
「念のために調査もしたが、今回の件に関しては白だ。
あの男にはもう、『レッドラビット』に変じるような気力は無い」
「‥‥‥」
 俺は未だ、この人のように平静を保ったままであの男に相対する自信など微塵も無い。
思い出すのも、口に出すのも憚(はば)られる。
 ……逆に、何故そんな風に平静にしていられるのかとさえ思ってしまう。
幾ら内面を押し殺すのに慣れているとはいえ、こうも異常なまでに冷静にいられるものだろうかと。
年の功もあるのかもしれないが、ある意味で俺以上にこの人の人生はあの男の所為で狂わされたはずなのに――。
「……貴方は、如何してそれほど落ち着いていられる?」
 その疑問が、口を衝(つ)いて出た。
言った後で、問うべきではないと思ったが……もう遅い。
無言の気配に恐る恐るに視線を上げれば、あの人の表情は組まれた両手で見えなかった。
「……オマエ以上に、私は拘(かか)わり続けたからだろうな。
揺さ振られるほどの激情など、最早久しい」
 自嘲を含んだ言葉は、ひどく密やかに響いた。
そして、解かれた手から覗いた表情に浮かんでいたのは、静やかな愁(うれ)いだけ。
「……ご、めん……」
 けれども、顔を合わせていられず、再び視線を落とした。
その視線の先で握り締めた自分の拳が色を失っていたが、痛みなど感じなかった。
「いや、良い。
訝しがるのが普通だ。
チーフも同じような事を言ったよ」
「……チーフにも、」
「同じように答えた。
……チーフもまた、オマエと同じような反応をした。
私は既に、おかしいのだろうな」
 その声色と様相から垣間見えたのは、この人が歩んできた荊の道。
「――」
 かける言葉など、欠片ほども見つからなかった。
「……だが、私の事など良い。
話を戻そう」
 それゆえに、促された言葉に流されるしかなかった。
歯痒いが、今の俺には気の利いた言葉一つ存在しない。
「招待状は再び届いた。
しかも、いないはずの人間に対して確かに」
「‥‥‥」
 圧し掛かるような疲労と嫌悪の中、頷きだけで肯定する。
『鈴原樹』――仮の姿の一つだったそれは、俺にとっては心の奥底に厳重に沈めておきたい存在でもあった。
その名を思い返すと、如何しても今逢う訳にはいかない彼等を思い出してしまう。
 だが、それ以上に不可思議なのは、今結さんが言った通り。
あの『ゲーム』の当事者であった『レッドラビット』がああなった今、誰が何故知っているのか。
それこそ、『レッドラビット』とて『鈴原樹』の正体が『月ヶ瀬龍樹』であると確信していた訳でもないというのに。
「さて、龍樹。
差出人の正体は、何者だと思う?」
 かつての仮の姿を知っているという事は、『レッドラビット』の関係者である事は間違いない。
だが、誰かと問われると答えに窮(きゅう)した。
「……無関係な者、ではないと思う。
でも、見当がつかない」
「そうだな」
 結果、素直に意見を述べれば、結さんは相槌を一つ打った。
「……では、私が企てたとしたら如何する?」
 そして、無表情のままで告げた。
……確かに、それが一番辻褄が合うだろう。
 この人もまた、当事者の一人だ。
それも、恐らくはあの『ゲーム』の全貌を誰よりも把握している一人だろう。
それをして、その能力と伝手を駆使すれば、驚くほどに難しくも無いと言ってしまえる。
「有り得ない」
 だが、だからこそ言い切れた。
「何故、そう思う? 私は、それほど出来た人間ではない」
「……生憎、貴方ほどの内心を読み取れるほど、俺は聡くない。
だけど、この『ゲーム』が引き起こす事の因縁を誰よりもよく知るのは、貴方だ。
その貴方が、『ゲーム』を企てる理由が見つからない」
 様々な思考を巡らせたところで、結果は同じだった。
先ほどの様子を見ていれば、尚更に。
「何より、俺は貴方を信じてる」
 結局のところ、俺はこの人を誰よりも信じている。
如何したところで、それが偽らざる真実だった。
「……そうか」
 対して、結さんは消え入るように伏せ目がちに薄く笑んだ。
苦笑とも自嘲とも取れず、微笑というにも複雑過ぎる笑みを。
しかし、それもただの一時――すぐに、表情を消し去った。
「では、此方も真摯に応えよう。
『瓜の蔓(つる)に茄子はならぬ』という言葉を知っているか?」
「……瓜から茄子はならない……原因が無ければ因縁も無い、と?」
「そうだ。
……一つ、心当たりがある。
いや、私の勘ではほぼ確信に近い。
これは、チーフにも伏せていたのだがな」
 頷きの後で、結さんは暫し目を伏せた。
空いたのは、数呼吸分の空白。
しかし、実に長い沈黙だった。
 ざわざわと、次第に胃液がせりあがるような気持ち悪さが込み上げた。
ある種の予感にも似た悪寒と共に。
けれど、その発言を止めようとは思わず、先を促した。
「恐らく、『レッドラビット』――あの男も知らなかったはずだ。
己が殺した妻に子がいた事を」
「――!」
 弾かれたように目を瞠(みは)れば、結さんは薄く笑っていた。
感情を感じさせない面でも貼り付けたような、色味の無い刻薄な笑みを。
「かつて、私が調べた範囲では、その子に汚点は無かった。
だから、見逃して捨て置いた。
……だが、やはり『瓜の蔓(つる)に茄子はならぬ』」
 その双眸の奥は、深く暗い水底のようだった。
在るのは、静寂。
しかし、その中にあるのは安静ではなく――むしろ、逆。
「……でも、何故?」
「獲物を横取りされたがゆえに、だろう。
復讐という概念が如何に人を狂わせるかなど、私とオマエがよく知っているはずだ」
「‥‥‥」
 復讐。
それは、確かに覚えのある感情だった。
「差出人は、試したいのだろう。
本来の獲物であった『レッドラビット』の牙を圧し折って生き残った我々を」
「……我々、」
 悪い予感が、した。
「……この招待状は、恐らく彼等にも行っているはずだ。
最後まで生き残り、辿り着いた彼等に」
「――」
 視界が、揺れた。
誇張でなく、目の前が暗くなった。
「で、も……未だ、来るとは……」
「来るさ。
明らかに罠だろうが、そこに望みがあるのならば」
 震えて掠れた楽観を、即座に否定された。
だが、妙に冷静な頭の片隅では、嗚呼その通りだと嘯(うそぶ)く自分がいた。
それは、実にふざけた忌々しい現実だった。
「彼等に限った話ではない。
私とて、そうする。
オマエは、違うのか」
 違わない。
俺とて、そうするだろう。
実に解り切った事だった。
 ……悪夢は、未だ終わらない。
何処までも追ってくる。
俺達だけでなく、彼等に対しても。
 ずぶずぶと、思考が沼に沈んでいく。
様々な感情をこね回した途方も無く深い沼へと。
あの日に味わった絶望を――もう二度と味わう事は無いと思っていたのに。
「私の一存で、暫く休暇を取っておいた。
では、支度をしようか」
 そうして、言葉さえ無く俯く俺に対し、結さんは静かに告げて席を立った。
「……え?」
「オマエに未だ覚悟が無いのは、解っている。
だが、その時に動かなければ後悔する――私のようにな」
 視線を上げて見た眼差しは、何処までも穏やかだった。
先ほどのような凍えるような冷たさも無く、ただの凪いだ水面のように。
「力を得たのは、何のためだ。
かつては復讐のためでも、今は違うだろう?」
「!」
 ……そうだ。
その通りだ。
それを、俺はあの『ゲーム』で理解したというのに。
「動く時だ」
 そして、あの日のあの時のように、その手を差し出した。
色の白い骨張った手のひらは、過去の記憶にあるそれと殆ど変わっていない。
「……結さん、貴方は……」
「便宜上とはいえ、私はオマエの親だ。
ならば、オマエと彼等のために力を使うのは、至極当然の事だろう。
さぁ、行こう」
「――、」
 引かれるようにその手に触れれば、今の俺の手と大きさこそ大差無かった。
けれど、そこに内容された熱と力強さは、言い様も無く温かく大きなものだった。
緩く握り返されただけでも、ずぶずぶと沈むだけだった心が引き上げられるほどに。
「……ッ、ごめん、俺は……」
「私は、オマエより長く生きている。
その中で、色々喪って、色々得てきた。
だからこそ、誰かのために力の使えるというのは、尊いものだと思っている」
 穏やかな声色に染み入る深みは、幾重にも積み重ねられたこの人自身の重みだろうか。
何時か――俺は、この人のようになれるのだろうか。
「守りたいのならば、腹を括り、覚悟しろ。
これは、『任務』ではない。
オマエにとっての『役目』だ」
 そうだ。
これは、果たさねばならない『役目』だ。
この人がそうして超えてきたように、俺もまた超えなければならない。
「行けるな?」
「ああ、行ける」
 顎を引き、意志を籠めて頷き返した。
目を背けてきた物事から逃げるのは、終わりにしなければならない。
「それで良い」
 そして、結さんは緩やかに笑んだ後で手を放し、踵を返した。
「結さん」
 その背に声をかければ、振り返らないままに足が止まる。
「……俺は何時か、貴方のように強くなれるか?」
 問えば、肩を竦める気配。
「若いオマエが何を言うのやら。
強さだけなら、もうオマエの方が上だ。
私はただ、小才(こさい)を使うのが人より長けているだけの事」
「……よく言う」
 思わず、ため息がこぼれた。
未だに一度も勝たせてくれない人が何を言うのやら。
全く以って、よくぞのたまったものだった。
「よくも言うとも、私は『裏方』なのだから。
舞台に上がる『役者』を引き立てるために存在し、そのためなら何にでもなる『影』。
私は、そういうモノだ」
 それは、実に言い得ていた。
表に立つ事無く、常に影となり生きてきた――この人の生き様そのものだった。
「強さの形など、一つではない。
そう願い望むのならば、後はオマエ次第だ」
 振り返らずにそれだけを告げ置き、結さんは再び歩み出し、やがて自室に消えた。
残されたリビングで、その言葉を反芻する。
 そして、再び深紅の封筒を手に取った。
その中身のカードを今一度確認し、宛名に刻まれた名を焼き付ける。
もう、二度と――父さんや母さんのような犠牲者を生みたくない。
俺をあの人とは違う形で変えてくれた彼等に、この恩を返せるのならば返したい。
「……後は、俺次第か……」
 あの人の言葉を繰り返した後、封筒に再びカードを戻す。
それから、俺もまた自室へと足を向けた。
 二度と、悲劇を繰り返さないために。
そして、後悔しないために。

***

※オマケ。此処から結視点です。

***

「チーフ、話はまとまったよ」
<……やはり、行くか>
 携帯を傾けた向こうで、予想通りに盛大な嘆息が聞こえた。
しかし、既に心は揺れない。
「行くよ。
それが、『役目』だ」
<少しは、此方を頼ったら如何だ>
 既に説得は無理だと悟っているのだろう、諦観と呆れを混ぜ込んだ声色が鼓膜を叩いた。
「頼っているとも」
<……多少は、だろう。
土壇場まで黙っている上に、そこまで悟らせないお前の図太い根性にはほとほと厭(あ)きれる>
 苦虫を噛み潰すように、煙草のフィルタを噛んでいるのだろう。
その様が見えるような苦ましい口振りに、思わずおかしくなる。
「そうだろうね」
<笑うところじゃないだろうが>
「ああ、すまない。
謝るよ、諸々を含めて」
 言えば、息を潜める気配。
<……お前は、器用なクセに本当に不器用な奴だよ。
よもや、死ぬ算段などしていないだろうな?>
 探るような声色には、多分の本音と多少の冗談。
「さぁ、如何だろうね」
<……結、>
「冗談はさて置こうか。
あの子達がいるというのに、死ぬ算段などしていられない。
死ぬのならば、どこぞで独りで死ぬ」
 咎める声に対して、今度こそ真摯に返答する。
事実、偽り無くそう思っている。
覚悟など、とうの昔に終えているのだから。
<――、お前は本当に莫迦だな>
 返答に混ざるのは、哀感と苦味。
組織の中では誰よりも他人の事を考えてしまいやすい、彼らしい声色だった。
「憐れみなど、必要無い。
私には、それが似合いというだけだよ」
<龍樹の前で、同じ台詞を言えるか?>
 それに我ながら愛想も無く答えれば、噛み付くように切り返された。
流石、よくぞ痛いところを知っている。
「……そう言われると、弱るね。
だが、必要があれば言うよ。
そんな必要が無ければ、一番だがね」
 あの子と出逢う前から決めていた事なのだから、仕方が無い。
そう暗に言えば、またも盛大な嘆息で鼓膜を叩かれた。
<訂正しよう、お前は大莫迦だ>
「それはどうも」
 それから、暫しの沈黙。
恐らくは、携帯の向こうで新たな煙草を取り出して噛み潰しているのだろう。
<……生きて帰れ。
そう約束するなら、お前達の空きは何とかする>
 そして、苦味を残したままで口にする。
私も大概だが、彼も十分不器用なものだ。
「善処しよう」
<必ずだ>
「ああ」
 しかし、彼は組織の人間としては有能だが――多少、優し過ぎる。
それゆえに、無用な心配をしてしまう。
付き合いが長いというのは、こういう時に困りものだ。
「後は頼むよ」
<……不本意だが、了解した>
 実に腹の底から不本意そうな声色を出され、思わず苦笑がもれた。
「ありがとう、すまない」
<……、信じているからな。
じゃあな>
 そして、ぶっきらぼうに言い放つなり、通話が途切れた。
「……信じている、か」
 信じ、信じられる相手がいるというのは、仕合せだ。
逆に、そんな相手がいなかったのならば……それは、悲劇ではないだろうか。
「悲劇を知りながら、悲劇を起こすか」
 恐らく、あの招待状を認(したた)めた相手は、『影』だ。
復讐などと一言では言い表すべきではない――『レッドラビット』から生じた歪な『影』。
 悲劇の終幕など、繰り返したところで歪んでいくだけだというのに。
そうと知りながらも尚、そうしなければ息が出来ない憐れな存在。
ある意味、我々にとっての『影』ともいえる『それ』。
 だからこそ、行かなければならない。
終わらせなければならない。
これは、その最後の機会なのだろうから。
「……嗚呼、憐れだな」
 仰ぎ見た空は、ひたすらに青かった。
そんな空の青みが解るだけ、私は幸せだ。
彼(か)の子には、恐らくこんな色には見えていないだろうから――。

***

先にも書きましたが、書置きしておいたものをそれなりに読めるように加筆しただけで、変更前提という事でご了承をば。
愁夜サイドは、後々余裕があれば書くやも。
尚、結は毎度案内・導き役になっていますが、実はわざとです。
名前も『結える=縁を結びつける』という意味でつけていたりします。
ゲームのオマケで尚也が結えるでユエかみたいな事を言ってるのも、実はその一環です。
皮肉なのは、結本人の縁がそれほど幸福ではない事ですが、逆に苦難を経ているからこそ異常なくらい冷徹に『役目』を演じられるのだと思います。
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プロフィール

KUROZ

Author:KUROZ
黒いまめっぽいナマモノ。
最近、珈琲がうめぇ。
禿げ散らかすのが気になるお年頃。
まめっぷ。

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