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連載小話・六話

何とか週末に間に合って良かった良かった。
とりあえず、そんなこんなで六話目です。
あとどのくらいか、自分でもちょっと解りませんが、二十話までは行かないと思います。多分。

拍手など、ありがとうございます。
興味のある方のみ折り曲げからどうぞ。

 

※無断流用・転載厳禁です。

六話・発生・三


※愁夜視点です。

***

 それから、暫くして――俺達は、龍樹さんと結さんの知り合いだという人物と遭遇していた。
「「‥‥‥」」
 そんな俺とあーさの首は、上に向いていた。
(長い)
 そう、高い――いや、長い。
それこそが、俺達の今の素直な心境だった。
「……首、大丈夫か?」
 高みから、静かな低音が降ってくる。
「……、え? あ、大丈夫、です……」
 そこで、俺は漸く我に返った。
だが、やはり視線は見上げたまま。
 俺でさえ見上げなければならないのだから、あーさにもなれば首がほぼ90度に近い。
口も半開きだった。
 それもまた、無理は無い。
目の前の人物は、上背も長く、風貌も日本人のそれではなかった。
 白髪とは違う透明感のある象牙色の……プラチナブロンドというヤツだろうか。
顔立ちもまた、強面というより怜悧な印象が勝っていた。
(映画に出る俳優みたいだ……)
 そう、SFやハードボイルドの洋画に出ていそうな――第一印象としては、そんな感じだ。
龍樹さんや結さんのような美形ではないが、独特で人目を引く外見だった。
「……そんなにアレか?」
 眉根を寄せて、結さんに問うその言葉が実に流暢な日本語だと気づいたのは、大分後でだった。
自分でも、かなり驚いていたらしい。
「長い上に、日本人でもないからね。
見慣れないのは仕方ないと思うよ」
 対する結さんは、緩やかな笑みを浮かべてフォローを口にした。
「俺も、初めの頃は見慣れませんでしたから」
 龍樹さんもまた、同じように意見を述べた。
「……まぁ、それを言われると仕方ないが」
 その視線は、未だに見上げているあーさに注がれていた。
まるで、大木を見上げる子供のような顔で無心に凝視していては、確かに居心地が悪いだろう。
「あ、すいません……おい、あーさ!」
 そこで、俺も漸く本格的に立ち直ってその肩を叩けば、あーさがびくりと揺れた。
「ふ、ふぇッ!?」
 そして、ひとしきり挙動不審に身体を震わせた後で、ぐるりと此方を見る。
目が丸い。
「し、しーやクン! 外人サンだよ!!?」
 おう、知ってる。
内心で頷きつつ、俺は何とも言えないぬるい気分になった。
「すっっごく長いよ!!?」
「……ああ、うん、そうだな。
とりあえず、指を差すんじゃない」
 喚き立てるあーさの気持ちは、けれども非常によく理解出来た。
だから、曖昧に頷いてそれだけを注意した。
「……異人くらい、珍しくないだろう?」
「ウチでは珍しくないですが、彼等は一般人です。
その上、チーフの場合は通常イメージするタイプとは違いますから」
 ぼそりとバツが悪そうに呟く長い人に、龍樹さんが冷静に告げた。
「そうだね。
通常、異人といえば賑やかで金髪かつ青い目というイメージが強いからね。
貴方は、その逆だから仕方ないよ」
 結さんもまた、微笑ましげにフォローした。
そういえば、目の色は薄いグレーで青くなかったと思い返す。
「そういうモノか」
「そういうモノです」
「そういうモノだよ」
 やがて、三者の意見がまとまった。
そういう事になったらしい。
「では、改めて紹介するよ。
彼は、チーフ。
組織の中間管理職でね、こう見えてもウチ一番の常識人で一番の良心だよ」
「尚、身長は一番ではない」
 そして、結さんに続き、龍樹さんがぼそりと付け足した。
「えッ!?」
 そこに、あーさが喰い付いた。
いや、俺も実のところは驚いたが。
「ウチは、多国籍の裏方組織だからね。
職業柄、体格が良い者が多いんだ。
だから、私達から見ると長い事は長いけれど、組織として見るとそう珍しくは無いかな」
 そんな俺達に対して、結さんが笑みを浮かべたままで言った。
「あー……」
「言われてみれば……」
 その言葉に、俺達もまた、それぞれ思い至る。
確かに、荒事に長けた職業である事を抜き出せば、そう不思議でもない。
先ず、筋骨隆々の逞しい男達、といったイメージが形作られる。
 そう考えれば、龍樹さんや結さんは一見ひょろりとしているのに、よくやっているものだと思う。
「まぁ、東洋人は基本的に小柄だしな。
それも致し方ない」
 そんな俺の思考を察してか、長い――チーフさんが呟くように頷いた。
「……が、それゆえに手癖足癖口癖が悪いのも考えものだがな」
 そして、その切れ長の目がすっと動いた。
視線の先には、言わずもがな。
「闘いは、生き残る事が全てですから」
 龍樹さんの返答は、俺達より一つ上とは思えないほどに泥臭かった。
ちょっとばかり、目頭を押さえたくなった。
「うん、勝てば全てだね」
 一方の結さんの返答も、実に剛毅だった。
それだけで、この親あってこの子あり――という事だけは、すぐに理解出来た。
「……ええっと、それはそうと、俺達はチーフさんとお呼びすれば?」
 そして、視線を明後日に逸(そ)らしたままで、俺はそっと問いかけた。
何とか話題を変えたかった事を、どうか察して欲しい。
「うん、チーフはチーフだし、それで良いよ」
 それに対し、結さんがのらりくらりと答えた。
「ウチでも、チーフを名前で呼ぶ者はいないからね」
「それどころか、一般隊員にもなると、名前を聞いてさえいないような」
 そして、結さんと龍樹さんが呟くように言い、その長身を見上げた。
それはそれで如何なのだろうと思ったが、俺達はぬるい笑みで流す事にした。
 あくまで、俺達はただの一般人。
藪は、突くものではない。
「……誰も訊かないし、言っても忘れるんだ。
仕方なかろう」
 そうして吐き出された苦渋の一言に、同情を禁じえなかった。
 とはいえ、人の記憶というのは不思議なもので、印象付けが強い方が優先される事は多々ある。
例えば、俺にしても急にあーさから前触れも無く『愁夜』と呼ばれたら、違和感がしてしまう。
逆もまた、然りだろう。
 それと同じ事で、不運にもチーフさんは本名より呼称の印象が勝ってしまい、今に至るのだろう。
何ともはや、複雑というか切ない話だ。
「で、お前達はちゃんと憶えているんだろうな?」
 そして、チーフさんは鋭い視線を投げかけた。
ちょっとばかり祈るような眼差しに見えたのは、恐らく錯覚ではない気がする。
「憶えてるけど、呼ばないよ」
 しかして、結さんは素晴らしい笑顔とともにのたまった。
「すいませんが、右に同じく」
 龍樹さんもまた、真顔のままで流した。
「……嗚呼、そうかい」
 チーフさんの背中は、煤(すす)けていた。
二人の中では、チーフさんはそういう位置付けらしい。
「……何か、アレだね……」
 横で、あーさがぼそりと呟いた。
「……そうだな、アレだな……」
 俺もまた、ただ相槌を打った。
そして、心の中でチーフさんのご健闘を祈った。
「……もういい。
それより、時間が惜しいんだろう。
そろそろ出発したら如何だ?」
 やがて、長い嘆息の後で、チーフさんがそう切り出した。
そうだった、と思い出した事を、どうか許して欲しい。
(……すまん、シノメ、セイタロウ……忘れようと思って忘れてる訳じゃないんだ)
 俺は、心のうちで二人に詫びた。
何だか色々と衝撃的な事があり過ぎて、神経が磨耗しているらしかった。
「そうだね、出発しようか」
「あ、はい」
「そ、そうですね!」
「チーフは、最後尾で大丈夫ですか?」
「ああ、問題無い」
 そして、俺達は結さんの言葉に気を取り直し、それぞれ頷き合うと、再度車に乗り込んだ。

***

何だかんだで、チーフは一番マトモなので、普段はいじられたり貧乏くじを引いたりしてます。
その一方で、組織の奇人変人をまとめつつ、細かいやり繰りしているので、実質組織の要です。
そんな彼の本名は、きっと長くてややこしいはず。
因みに、チーフは頭脳労働と治療技術には長けているものの、戦闘は苦手だと思います。

尚、結と龍樹を含めた親しい間柄の人達は、ちゃんと憶えてますのでご安心を。
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Author:KUROZ
黒いまめっぽいナマモノ。
最近、珈琲がうめぇ。
禿げ散らかすのが気になるお年頃。
まめっぷ。

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