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連載小話・七話

天候がよろしくないため、遅くなりまして申し訳ないです。
落雷で一度パソコンを葬り去られているので、悪天候の時は繋がないようにしている小心者なまめ野郎です。
そんな感じで、今回から次の章です。
とりあえず、次くらいまではストックが確保出来ましたが、未だ終わりが見えてきません。
なんということでしょう。

では、興味のある方のみ、折り曲げからどうぞ。

 

※無断流用・転載厳禁です。

七話・突入・一


※愁夜視点です。

***

「……要件は、理解した。
まぁ、俺は祓い屋ではないが、世話になった奴が本職だったからな。
それに、多少はその手のが視得る方でもある。
お前達が望む程度の手助けはしよう」
 車内で一通りの説明を受けた後で、チーフさんが口を開いた。
「助かるよ、チーフ」
「本来なら、時間外の雑用は受けんが、お前に恩を売れる機会なんてそうそう無いからな」
 そして、結さんに対し、チーフさんは口許だけで笑う。
「それはどうも。
お返しは、何を?」
 結さんもまた、含みのある笑みで返した。
「あの件で、猫の手でも一つ借りようか」
「おや、欲の無い」
「ハ、俺は『良心』のある『常識人』だからな。
お前相手に吹っかけはしない」
「それはまた、悧巧な事で」
 彼等のまとう空気は、気心が知れた者同士だというのに、何処か浮世離れしていて独特な雰囲気を醸していた。
冷えているとも、重いともつかない。
 近いとするなら、それは褪(さ)めているというのか。
熱は無くとも情は通う――そういった印象を受けた。
「……あと、三十分ほどで到着します」
 そして、二人の会話の後で、龍樹さんが静かに告げた。
「では、改めて話を進めようか。
先ず、例の獣の件については、如何思う?」
 それを受けて、結さんが再びチーフさんへと問いを投げた。
「……考えられる事は、結界だな。
一般的に、神というのは血や死――いわば、穢(けが)れを否むとされている。
無論、その限りではないが、大体にして真っ当な神というのは神聖で潔癖であるべき存在(モノ)だからな。
逆に言えば、怪異は血や死のような穢れを好むからこそ、神とは一線を画(かく)するともいえる」
 細い顎に手をかけながら、チーフさんが静かに言葉を並べていく。
 なるほど、言われてみれば日本でも穢れという概念は古来から息衝いている。
彼の有名な日本神話の中でも、黄泉から帰ったイザナギが穢れを祓(はら)うために禊(みそぎ)をし、三貴子(みはらしのうずみこ)が生まれたとされる。
 穢れというとよろしくない印象が勝るが、一方で血や死を切っ掛けに新たな神が生まれる事もあるため、確かにその限りでもない。
そう考えると、生死や穢れの概念というのは不思議なものだ。
「それをして、奴(やっこ)さんは穢れを自ら生み出す事で山を自分の領域へと作り変えたんだろう。
何処でも多かれ少なかれ何らかの領分というのは在(あ)るものだが、それらを穢れによって追い出して、自分専用にした訳だ。
自分の力が強いに越した事は無いし、及ぶ範囲が広いに越した事も無いからな。
そうして、準備を整え、小僧達を信用させた後で誘き寄せたと」
「……計画して騙すなんて、狡(こす)いですね」
 改めて聞くと、不愉快さが増す。
怪異としては、在り来たりの手段かもしれないが、やられる方はたまったものではない。
「……、まぁな」
 それに対して、チーフさんは一呼吸を置き、相槌を打った。
何処か含むような色があったが、それが何かまでは俺には解らない。
「‥‥‥」
 一方の龍樹さんもまた、押し黙るように口を噤んでいた。
結さんの表情までは、俺からは見えないが――何か、よろしくないモノを踏んだのだろうか。
 だが、思い当たる節は無かった。
「えっと、それで……シノメクンやセイタロウクンは、無事なんですよね?」
 そんな空気を読んでか、あーさが控えめに声を上げた。
「大丈夫だよ、今はね」
 それには、静かな声で結さんが答えた。
「お前達にはシビアな話になるが、この手の奴は人間の恐怖や怒り、絶望といった負の感情が高まれば高まるほど悦ぶ。
だから、結の言う通りに、今は未だ泳がせている頃だから大丈夫だろう。
……ただ、そんなイイ趣味の奴ともなれば、それなりの怪異ではあるだろうがな」
 結さんの後を引き継ぎながら、チーフさんは懐から木製の洒落たケースを取り出し、中の煙草を口にした。
「……それでだ。
はっきり言って良いか?」
 その言葉は、俺達に向けられていた。
よろしくない事であろうとは察せたが、聞かない訳にもいかない。
「……どうぞ」
 不安げに此方を見るあーさに頷きを返し、それから俺は口を開いた。
「小僧達の動きにもよるが、リミットは恐らく――夜明け前までだ。
それ以上は、奴が待たないだろう」
 低く静かな声が、車内に響いた。
「――ッ」
 言葉が、息ごと詰まる。
ある意味、予想していたとはいえ、やはり堪えた。
 視界の端に映るあーさの顔から一気に色が失せ、まさに愕然とした表情になっている。
俺もまた、似たようなものだろう。
 『あの時』にも感じた、重く濁るような沈黙が、足元から這い上がってくる。
嫌な悪寒までが、背筋を走っていった。
「時間は、あるね」
 その沈黙を振り払ったのは、結さんだった。
「まぁ、十分だろうよ」
 チーフさんもまた、飄々とした口振りで相槌を打つ。
「……如何(いか)に?」
 そして、龍樹さんが静かに促した。
そのやり取りは何処までも淡々としており、聞き方によっては薄情にさえ聞こえる。
 だが、恐らくはそうではない。
感情のままに悪態を並べ、我を失っても時間の無駄――だからこそ、極めて冷静に物事を把握している。
 『あの事』を経た今だからこそ、それが解った。
そして、今はそれがありがたかった。
「今の薄墨(うすずみ)山は、相手の領域。
踏み込めば、恐らくそのまま飲み込まれるだろうね」
「まぁ、そうだな。
一度入れば、小僧達と同じに奴(やっこ)さんを何とかしない限り、出られんだろう。
逆に言えば、中で何か起きても多少の事では気づかれんがな」
 結さんの言葉に、チーフさんが火のついていない煙草を弄びながら頷いた。
「……つまりは、ミイラ取りがミイラ取りになるっていう事ですか?」
「通常ならば、な」
 そして、恐る恐るに問いかけた俺に、龍樹さんが含みのある返答を返した。
「え、それって……」
「何か、手があるんですか?」
 それに対して、あーさが声を先ず上げ、俺が続けて問うた。
「怪異が関わっていると解った以上、手ぶらとはいかないからね。
間に合わせではあるけれど、事前に準備はしてきているよ」
「わぁ、流石ですね!」
 結さんの言葉に、硬かったあーさの顔が漸くゆるんだ。
俺としても、声こそ出さなかったが同じく膝を打つ思いだった。
「それで? 作戦としては、如何するつもりだ。
今回は、俺は立てんぞ」
 そして、チーフさんが改めて結さんへと振った。
「そう言うと思って、捻った良い作戦ではないけれど、一応考えてきているよ」
「よくぞ吹く」
「全く以って」
 その苦笑交じりの返答に対して、チーフさんと龍樹さんの素早いツッコミが入った。
それも、舌打ちでも聞こえてきそうな素気(すげ)無い声色で。
「え、えっと……?」
「シッ、訊いちゃいけません!」
 そして、俺は藪を突こうとしていたあーさを叱咤した。
「ひどいな、二人揃って」
「これについては、貴方が悪い」
 苦笑を更に深くする結さんを一瞥もせず、龍樹さんがばらりずんと言い切った。
「そうかな?」
「貴方は、そうやって今まで幾つ潰してきたとお思いで?」
「さぁ、数えてないからね」
「「‥‥‥」」
 嗚呼、これは確かに結さんが悪い。
何を幾つ潰してきたかとは、それこそお察し下さいというものだろう。
 一般人である俺達は、ぬるい笑みを交わした後で、そっと視線を逸(そ)らした。
俺達は、何も見ていませんし聞いていませんし話しません。
「で? いけしゃあしゃあとのたまうのは置いといて、内容は。
勿体ぶらずに吐けよ」
 ぶっきらぼうに言うチーフさんの目は、ガッツリ据わっていた。
ガラがやけに悪くなった気がするのは、多分気の所為ではない。
「勿体ぶっている訳でもないけれど、今はさて置こうか。
相手は、我々が動いている事には未だ気づいていないだろうからね。
先ず、二手に分ける。
中から干渉する組と、外から干渉する組とね」
 そんな刺々しい空気の中でも、結さんは然して気にした様子も無く口を切った。
「言うなれば、あえて中に入って相手の注意を逸(そ)らすのが前者。
そうして注意が逸れたところで二人を救出するのが後者。
そんなところかな」
「なるほどな」
 その作戦に、チーフさんが相槌を打ちながら付け足した。
「だから、視得る方である俺を呼んだ訳か」
「そう。
私達は、視得る訳ではないけれど、今までの杵柄(きねづか)で何とでもなる。
でも、愁夜さん達はそうはいかない。
相手が如何動いているか、シノメさん達がどの辺りにいるか……そのフォローも踏まえての人選だよ」
 話の腰を折らないようにと声にこそ出さなかったが、その気遣いに感心した。
さぞ仕事も出来るのだろうと察するにも、十分だった。
「何より、悪目立ちして勘付かれる訳にはいかないからね。
あくまで、相手の裏をかく――それを加味すると、貴方が一番適任だった」
 そこまで言われて、だからあの紅い魔術師やナマモノを呼ばなかったのだと思い至る。
彼等は、色んな意味で目立ち過ぎる方だろう。
相手が怪異ともなれば、尚の事だ。
 それをして、今までの話をまとめると、早い段階から凡(おおよ)そ見越していたとして良いだろう。
この人達を頼って正解だったと思いながら、俺は内心で舌を巻いた。
 流石は、数えないほどにアレやコレを潰してきた御仁だ。
敵にいたらこれほど厭な人は無く、味方にいたらこれほど頼れる人も無い。
「二人の救出は言わずもがなとして、もう悪さをしない程度には、相手にも反省してもらわないといけないからね。
一気に片付いたのでは、面白みが無い」
 そして、何時も通りの声色で、表情一つ動かさずに、その人は嘯(うそぶ)いた。
ふ、と……車内の空気が、確かに変わった。
 重いでもなく、冷たいでもなく、刺すでもなく。
ただただ、台風に開いた目のようにぽっかりと色味の無い空白が空いた。
 訂正しよう。
彼等を呼ばなかったのは、目立つからではなく……面白みが無いから、だ。
その静かな様相とは裏腹に、少なからずお怒りであるらしい。
「反省会が始まるまでは、静かに密やかに動かなければね」
 言い様も無く穏やかで色の無い声色の中、けれども確かに息衝く何かを察し、不意に総毛立つ。
隣から固唾を飲む音がするのも、無理も無い事だった。
(……嗚呼、これは確かに――エグい)
 色んな意味で。
龍樹さんやチーフさんが、思わず半眼になってツッコミを入れた気持ちが解った。
これは、『救出』というより『殴り込み』の方が、恐らく的確だ。
「……ご愁傷様」
 そんな中、俺達の心の声を代弁するかのように、チーフさんがぼそりと呟いて煙草を噛んだ。
あえて言わずとも、それが誰に対して吐かれたものかも理解出来た。
 相手が怪異であるとか、そんな問題も今では小さい。
ただ、敵に回した相手が至極よろしくない――それに尽きた。
「さて、そろそろと組決めをしようか。
私と龍樹が中に。
愁夜さん達とチーフは外で。
各々、質問は?」
 そして、結さんは綺麗さっぱりと空白を消し去り、理路整然と言葉を並べた後で、問いを振った。
「任せる」
 先ず、チーフさんがなげやりに答えた。
「特には」
 そして、龍樹さんがさらりと答える。
「……ありません」
 俺もまた、ひっそりと答えた。
「……あ、あたしもです」
 最後に、あーさがもそりと答え、作戦会議は滞りなく終了した。
「では、愁夜さんとあさねさん」
「! はい」
「あ、はい!」
 そして、静かな声で呼ばれ、俺達は緊張とともに返事を返した。
「君達は、主にチーフに指示を仰いで行動してくれれば良いからね。
それまでの間、車の中で待機していてほしい。
私達の方は、任せてもらって大丈夫だよ」
「はい、解りました」
「が、頑張ります!」
 簡潔に説明する結さんの言葉に、俺達はそれぞれ了解を返す。
今頃になってやっと、これからが本番なのだと実感がわいてきた。
(いよいよ、か……)
 にわかに騒がしくなった鼓動を片隅で聞きながら、俺はひっそりと深呼吸をした。
しかし、『あの時』のような絶望感や焦燥は無い。
今更ながらに、俺は運が良かった事と、独りではない事に感謝した。
「神代、宮川――お前達は、逆平達だけに集中すれば良い。
面倒事は、此方に任せろ」
 そして、そう告げる龍樹さんの声は、淡々としながらも穏やかだった。
「……、はい」
 その声色に何処か懐かしさを覚えながら、俺もあーさも頷く。
思う事が無くも無かったが、今はただ、言われた通りに集中するだけだ。
「……単純な作戦ではあるけれど、だからといって簡単ではないからね。
二人を救出して、合流するまでは気を抜かないように。
とはいえ、あまり緊張してもいけないけれどね。
各々の健闘を祈るよ」
 最後に結さんが言葉を締め括り、各々が言葉の代わりに頷きを返した。
「……そろそろか?」
「ええ、もうすぐ到着します」
 そして、チーフさんに答える龍樹さんの言葉通り、程無くして車が徐々に速度を落としていく。
車の窓を見やれば、薄墨山の付近は閑散として人家も殆んど無く、闇の中に頼りない明るさの街灯が見られるだけだ。
 山の方を見ても明かり一つ無く、確かに人家があるような様子は無い。
目を凝らして、やっと木々の影がぼんやりと見て取れるくらいだ。
(二人とも、無事でいろよ……)
 俺は、改めて二人の無事を祈りながら、音沙汰の無い携帯を握り締めた。

 ――やがて、薄墨山の付近にあった空き地で車は止まった。
その開かれたドアから冷え切った風が入り込み、思わぬ寒さに首が竦む。
「わ、結構寒いね……」
「そうだな」
 そして、隣のあーさが同じように身を竦めているのに相槌を返す間に、結さん達は車を降り、手早く身支度を整えていた。
「時間が惜しい、早速始めよう。
チーフ、そちらの突入タイミングは任せるよ」
「解っている。
出来るだけ、東に離せ」
「了解した。
では、時計合わせを」
 それから、二言三言の確認を交わし、各々の時間を合わせる。
「目処としては、四十分」
 そして、チーフさんが告げ――。
「了解した」
「了解」
 二人が応じる。
淡々としたその挙動に無駄は無く、やり取りもまた最低限だった。
「では、行こうか」
「了解」
 そして、結さんと龍樹さんは、そのまま足を山へと向けて歩き出す。
声の一つもかけるべきかと思ったが、野暮な気がしたので止めた。
 あーさもまた、そう思ったのか――奥歯に何かが挟まったかのような表情をしていた。
気持ちは解ったので、俺はただ苦笑しながら二人の背を見送る。
 二人の行く先は、辺りに人家も無く、頼りない街灯だけでほぼ真っ暗に近い。
その上、ライトさえ持っていないのだが、二人の足取りに淀みは無い。
 あまつさえ、だ。
(……足音してなくないか?)
 耳を澄ましても、しない。
嗚呼、これが職業病というアレか。
あーさは気づいてないらしいので、俺だけちょっと視線を逸らした。
 その間に、二人の背中は完全に闇へと同化していた。
それほど離れていないはずだが、身にまとう衣装そのものが暗色な所為もあって、何処にいるのかもう解らない。
「……いよいよだね」
 そんな俺を他所に、あーさが真面目に振ってきた。
「……ああ、そうだな」
 今ばかりは、あーさを褒めても良いような気がしたが、状況が状況なので相槌を返すだけにした。
「それにしても、怪異か。
……まさか、こんな事になるなんてな」
「うん、ちょっとおにくちゃんのイメージがあるからピンと来ないよね」
 俺達は、所謂悪意のある怪異に遭遇するのは初めてだ。
だから、あーさの言う通り、未だにピンと来ない。
「まぁな。
だが、それはそれだ。
今は、二人を助け出すのに全力を尽くす」
「そうだね、頑張ろ!」
「ああ」
 そして、俺達は互いに確かめ合うように今一度、頷き合った。
長い夜が、始まろうとしていた。

***

何気に長くなってしまいましたorz
チート枠のお陰で、緊張感が仕事をしないのは仕様です。
あと、某御先祖は気配を消すのは得意なので、気づかれてないと思います。

尚、チーフはその某御先祖もガッツリとはいかずとも、何と無く視得てます。
でも、今までもスゴいのが憑いてたので、あー変わったのか程度の認識です。
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プロフィール

KUROZ

Author:KUROZ
黒いまめっぽいナマモノ。
最近、珈琲がうめぇ。
禿げ散らかすのが気になるお年頃。
まめっぷ。

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