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連載小話・九話

そんなこんなで、九話目です。
未だ最後まで書ききっていませんが、終わりは見えてきたので、地道に書いて行きます。
まったりお付き合い頂ければ、是幸いでございます。

では、興味のある方のみ、折り曲げからどうぞ。

 

※無断流用・転載厳禁です。

九話・突入・三


※愁夜視点です。

***

 ――それから、薄墨(うすずみ)山に到着して、早くも十数分が経っただろうか。
辺りはすっかりと闇の帳(とばり)に隠され、今となっては山の形さえも見て取れない。
 龍樹さんと結さんは、所謂(いわゆる)中から干渉する囮組として、今頃は作戦を実行しているはずだ。
あの人達に対して、過度の心配はしていない。
ただ、上手くいくと信じている。
 一方で、俺とあーさはといえば、指示された通りにチーフさんと車で待機していた。
指示が来るまでの間、如何にも落ち着かないが、視得る方ではない俺達には異変は見て取れない。
 しかして、外で煙草を吹かしているチーフさんを伺い見ても、特に様子は変わらない。
今は未だ、動きは無いようだった。
「……大丈夫かなぁ?」
 そんな折、車内から窓を眺め続けるあーさが、落ち着かない様子で口を開いた。
心配しているのは、シノメ達の方だろう。
「……大丈夫だ。
そう俺達が信じるって、決めただろう?」
「うん……そうだね」
 そのあーさにやんわりと返せば、苦笑とともに頷きが返る。
とはいえ、俺も実のところは不安が無い訳ではない。
だが、だからこそ信じなければならないとも思う。
 今も尚、彼奴(あいつ)が生きていると信じて待っているように。
結さんが言ったように――諦めるには、未だ早いのだから。
「……あの、ちょっと伺っても良いですか?」
 しかし、そうは思えど間が持たないのも事実で、場を繋ぐように俺はチーフさんへと問いかけた。
「あぁ、何だ?」
 煙草を手にしながら、チーフさんが視線を動かさずに促す。
「中から干渉しつつ囮になるといっても、具体的にはどんな事をするんですか?」
 そこで、遠慮無く疑問を振ってみた。
話の腰を折るのも如何かと、さっきは黙っていたものの、一般人の俺達にはピンと来ないのだから仕方ない。
あーさもまた、興味が引かれたように、此方側に顔を寄せてきた。
「具体的に、か。
あの二人にしてみれば、散歩に行くようなものだな。
適当な場所でウロウロして注意を引き付ける程度、如何という事も無かろう」
 問いかけに対して、チーフさんは身も蓋も無く、ばらりずんと言い切った。
あの人達をよく知っている人物の言葉だけに、ぐうの音も出てこない。
「……で、でも、夜の山ですし……?」
 しかし、それではあまりにもアレだったので、せめてもと抵抗を試みた。
「そ、そうですよ、夜の山ってコワいですよ」
 あーさもまた、同じく思ったのか、続けて同意した。
「夜の山? ハ、夜の雪山に比べたら遊び場も良いところだ」
 だが、俺達のささやかな抵抗は、チーフさんの地雷を全力で踏み抜いたらしかった。
「あの二人は、確かにウチでは小柄でひょろっこいが、現場に行くと目の色が変わるぞ。
場合によっては、突き抜けて色んなネジがヤバい」
 此方を振り返ったチーフさんの目は、明らかに濁り、死んでいた。
「「……お、おう……」」
 俺とあーさは、その迫力にただただ圧される。
そして、チーフさんは尚も言い募った。
「……特に、冬の某I山で奴等が隠れた連中を見つける鬼役になった時は、まさに悲劇だった。
あの時ほど、俺は自分が運営側で良かったと思ったものだ。
奴等の外見に騙されて、楽だと高を括った連中の悲劇は、後に『某I山の白い惨劇』と称されるほどとなった。
考えてもみろ……冬の山で一人、また一人と仲間が闇の中へと引き摺り込まれ――」
「も、もも、もう止めてくらさい! チーフさん!!」
「そうですよ!! 俺達のガッツがゼロです!!!」
 その目が深淵を覗いてしまう前に、俺達は全力で止めた。
俺は何とか堪えたが、あーさなどは本気で涙目になっている。
 そんな状態で、このまま最後まで聞いてしまったら、現状よりもホラーな展開になるのは、明白だった。
「……ああ、すまん。
思い出したら、ついな……」
 そこで我に返ったのか、チーフさんははるか遠くを見たまま、短くなった煙草を落として踏んだ。
結さん曰(いわ)く、一番の良心で常識人だというだけに、色々と苦労をしている事が垣間見えた一時だった。
「……お疲れ様です……」
 そんなこんなで、俺が口に出来たのはそれだけだった。
あーさにもなれば、何処まで想像したのか、顔が蒼かった。
「……とにかく、あの二人を心配するなら、この程度ではアレだという事だ。
むしろ、相手の健闘を祈ってやった方が良い」
 そして、新たな煙草を噛み締めて、チーフさんがぼそりと口にする。
その音に滲むのは、確かに憐れみだった。
「……十分に解りました」
「ソ、ソレハモウ……」
 俺達とて、これ以上に藪をほじくり返す気力は無く、ただ頷いた。
「まぁ、奴(やっこ)さんも運が悪かったな。
あの結の事だ、タダでは済まんだろう」
「ッ!」
 そうして、呟くようなチーフさんの台詞に、あーさが大げさに肩を揺らした。
明らかに挙動不審になり、目が泳ぎ出す。
 心当たりがあるとすれば、以前にバカをやらかして結さんに呼び出された件くらいだ。
それをして、俺の家に迎えに来てくれた時、過剰に反応していたのも実は……。
「……なぁ、あーさよ」
「オ、オフッ!?」
 声をかければ、物凄い勢いであーさが振り返った。
だが、その目の焦点はブレまくり、身体も無駄に揺れ動き、アホ毛までも車の天井に突き刺さらん勢いで固まっている。
「……いや、何でも無かった……悪ぃ」
「ウ、ウン……イイヨ、ベツニ」
 嗚呼、これは重症だ。
その様があまりにも憐れで、俺は問いかけをそのまま胸に仕舞った。
「……えっと、それで、俺達ですけど……いても大丈夫なんですかね?」
 そんな微妙な空気の中、控えめに俺は問いかけた。
此処まで来ると、正直お任せした方が良いような気がしないでもなかった。
「中の小僧達のためにも、いてやれ。
あの二人だけで突っ込ませると、後で夢に見るぞ」
 しかして、そう告げるチーフさんの言葉と表情は、あまりにも真摯過ぎた。
何より、冗談で済みそうにも無いのがコワい。
「……ソウデスネ……」
「……ソウシマス……」
 だから、俺達はただ視線を逸(そ)らして頷いた。
年若い二人に、今以上のトラウマを植え付けるのは、忍びない。
いや、俺達も若いけども。

 それから、ややあって――チーフさんが二本目の煙草を落とし、踏みしめた時だった。
顔を上げ、そのまま山を睨むようにして目を眇(すが)める。
「……そろそろ出るぞ。
準備は、出来てるか?」
 視線を前に向けたままで促され、緊張が俺達の間に走った。
「……はい」
「だ、大丈夫です」
 それぞれ頷き、俺達は揃って車を降りた。
 改めて外に出ると、夜風がやけに冷たく感じる。
だが、今更引き返すつもりなど無い。
 とはいえ、俺達の目に映るのは闇ばかりで、やはり何も見て取れない。
音にしても、耳を澄ましたところで何も聞き取れない。
「ピンと来ないか」
「え、えぇ、まぁ……」
 異常を感じ取れない俺達の表情を見てか、チーフさんが口許だけで笑った。
「この手の能力は、得ようと思って得られるものじゃないからな。
それに、感覚に頼るところが大きいがために、説明もし難い。
気配がざわめくような感覚と、湧いたように視えざるモノが視得るというのは……まぁ、あまり愉快なモノじゃない」
「そうなんですか……」
「ああ」
 その説明に相槌を打つ傍らで、チーフさんが鍵で車をロックする。
そして、再び山の方へと視線を向けてから、俺達へと向き直った。
「とにかく、奴(やっこ)さんが動き出したのは確かだ。
本格的に小僧達の気配を探りに出る、ついてこい」
「は、はい、お願いします!」
「よろしくお願いします」
 促され、俺達は返事とともにその後を追う。
ついに、時は来た。
「……しーやクン、頑張ろうね」
「ああ、必ず助ける」
 互いに決意を新たにし、俺達は足早に薄墨山を目指す。
今はただ、二人を助ける事だけに集中する――それだけだ。
 そして、先頭を行くチーフさんのプラチナブロンドを目印に暗い夜道を歩きながら、俺はポケットの中の携帯の傷を撫でる。
俺達がやるべき事は、二人を見つけ出して助け出す事だと改めて心の中で繰り返し、腹を括った。

***

色んな意味でフラグが立ちました。

尚、今作はあくまでパラレルではありますが、鏡花水月の頃より愁夜は落ち着いたなあと思ったりします。
あーさも前よりは空気が読めてるような気がしなくも……?
チーフは苦労性ですが、髪は色が抜けたとかでなく、本当にプラチナブロンドなので安心して下さい。
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Author:KUROZ
黒いまめっぽいナマモノ。
最近、珈琲がうめぇ。
禿げ散らかすのが気になるお年頃。
まめっぷ。

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