スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

連載小話・十一話

連日、寒い日が続きますね。
朝起きるのが、実に堪えます。
そして、またストックが無くなってきた上、後の展開を如何するかで迷っています。
ちょっと捻りたいけど、奇を衒うより直球にした方が良いような気もしていますし、とにかく来週までには何とか方向を決めたい所存でおります。

では、興味のある方のみ、折り曲げからどうぞ。

 

※無断流用・転載厳禁です。

十一話・突入・五


※愁夜視点です。

***

 ――その後、俺達は西の方から薄墨山へと入った。
とはいえ、東には登山道があるが、西にあるのは獣道だけ。
 元より、夜の山道に慣れていない俺達は、携帯用ライトがあるといっても、足元が覚束(おぼつか)無い。
さっきから、彼方此方(あちこち)の藪(やぶ)やら枝木やらに引っかかっていた。
「ふぇッ!? あ、枝だった……」
「ッと……」
 獣道だから仕方ないとはいえ、俺達はさっきからこの調子だった。
サクサクと進んでいくチーフさんに、申し訳ない気持ちになっていく。
「すいません、足引っ張ってしまって……」
「お前達は、一般人だ。
そんな事を気にしなくて良い。
むしろ、こんな状況でへこたれずによくやってるさ」
 何とも侭ならない進行に謝れば、俺達を待っているチーフさんが口許だけで笑った。
「俺達のような職だと、慣れなければ自分達が危ないからな。
だから、彼方此方(あちこち)に籠(こも)ったりして、身を以って経験を積む。
そこまでして慣れるんだ、訓練していない人間が初めから出来るようでは、俺達の立場が無くなる」
「それは……ご尤(もっと)もです」
 そう言われると、俺も苦笑交じりに頷くしかない。
背後のあーさも、声こそ出さないが同じ心境だろう。
「……龍樹サン、あたし達と一つしか違わないのにスゴいね」
 代わりに、ぽつりとそんな呟きを零した。
「……そうだな」
 それに対し、俺はただ相槌を返した。
龍樹さんが今の職に就いた背景を知らない以上、勝手な憶測で返答は出来なかったからだ。
「龍樹がウチに入ったのは、そう昔でもないが――基礎をみっちり彼奴(あいつ)に叩き込まれていたお陰で、即戦力だったな。
誰に似たのか、顔に似合わず血の気が多くてアレだが」
 そう語るチーフさんの視線は、果てしなく遠い。
だが、血の気が多いとオブラートに包む辺りに、チーフさんの気苦労と人柄が伺えた。
「「……ソウデスカ」」
 俺達もまた、ぬるく相槌を打った。
とりあえず、何があってもあの人達を怒らせまいと心に誓うには十分だった。
 今頃、俺達がいる反対側――東の方で何が起こっているのか。
考えるのが、実に空恐ろしかった。
 俺達は、それからそっと口を噤(つぐ)み、夜の山道を歩く事に専念した。
相変わらず、途中で彼方此方に引っかかったりもしたが、一般人なのだから仕方ないと自分を慰めながら、ひたすら進んだ。
 それから暫くして、少し拓けたところが見えてくるなり、チーフさんが足を止めた。
俺達が傍に到着しても、歩き出す様子も無く、周囲を注意深く眺めている。
「……よし、この辺だな」
 そう呟くからには、俺達には鬱蒼とした闇とライトに浮かび上がる草木しか見えないが、チーフさんには何かが視得ているのだろう。
 やがて、様子を見守る俺達の傍らで、チーフさんは懐から不思議な破片のようなモノを取り出した。
「わぁ……光ってる」
 あーさの言う通り、その破片は闇の中でもそれと解るほど、仄(ほの)かに紅く光っていた。
ライトの光に反射したとかではなく、自発的に。
「……それは?」
「お前達の知り合いに、『魔術師』がいるだろう?
奴(やっこ)さんが前にやらかした時に、結が慰謝料代わりに受け取っていた代物でな。
アゾットの生り損ない――解り易く言うと、『失敗作』だ」
 俺が問えば、チーフさんが苦笑しながら答えた。
その取得した背景が、思いの他すんなりと想像出来てしまい、俺とあーさは思わず遠い目になった。
「……大丈夫なんですか?」
 あの人が本物の『魔術師』である事は知っているが、『失敗作』と言われて信用出来るかといえば……色んな意味で疑いがあった。
「まぁ、俺は会った事は無いが、結があれほどの天才はそういないと言うくらいだ。
専門分野に限っては、ウチの博士連中でも敵わないかもしれん。
そのくらいの腕となれば、大丈夫だろう」
 それを察したのか、チーフさんがフォローした。
本人に聞かせてあげたいほどの良いコメントだと思った。
「そもそも、これは結が持ってきたんだ。
現状においては、信用しても良いだろう」
「そう、」
「ですね」
 チーフさんの言葉に、俺達は顔を見合わせて頷いた。
 何だかんだで、あの紅い人もえぐみはあるが、悪人ではないのは確かだ。
理由が理由なだけに手放しで賞賛するのは少しアレではあるものの、その能力と知識には素直に感心しようと思う。
「それで、如何やって使うんですか?」
 それから、あーさが興味津々という風に問いかけた。
シノメ達の救出を急ぎたいところだが、俺とて興味がある話だ。
「此処の結界を構成しているのは妖力だが、それと似た霊的な力を集めた代物が、この『失敗作』だ。
平たく言うと、霊力を持たない人間でも簡単に怪異に対抗する力を得られるアイテムと言ったところだな。
無論、結達も幾つか持っていっている」
 チーフさんの説明は、実に解り易く噛み砕いたものだった。
「へぇぇ~、そんなにスゴいんですか」
 お陰で、あーさも納得がいったように感嘆の声を上げる。
「普段からヘンなのばっかり作ってる訳じゃないんですね!」
 そして、余計とも取れる一言を笑顔でのたまった。
だが、残念ながら事実であるため、閉口するしかない。
「……とりあえず、天才なのは確かだと知れて良かったです」
 そして、俺は何とも煮え切らないフォローのなり損ないをこぼした。
日頃の行いは、大事だと思った。
「……お前達の言い草だと、なかなか奇天烈な人物のようだな」
 そんな俺達を見て、チーフさんが微妙な表情で呟いた。
「あ、あははは……」
「まぁ、前科がありますから……」
 それに対し、あーさも俺も煤(すす)けた様相を呈(てい)するしかない。
後は、どうか察してほしい。
「……そうか。
まぁ、今はそれはさて置こう。
とりあえず、手短に説明するぞ」
 そして、一つ頷いた後で、チーフさんが改めて切り出した。
「あ、はい」
「お願いします」
 俺達もまた、気を引き締め直して先を促した。
「小僧達は、この結界の中にある空間に閉じ込められているらしい。
要は、一度入ると出られなくなる設置檻みたいなモノだな。
お前達が話に聞いた家とやらが、その役割だったんだろう」
「……なるほど」
「ほぇぇ……」
 チーフさんに言われ、俺達は逐一頷きつつ感心する。
そして、改めて狡(こす)い手を使うものだと辟易(へきえき)とした。
「でも、その空間っていうの、何処にも無いですよ?」
 そこで、あーさが更に問いかけた。
 確かに、見回しても俺達に見えるのは、夜の山の景色だけだ。
何処がおかしいかなどは、全く見えない上に感じない。
「そもそも、結界というのは侵入者を妨害するモノだからな。
俺も気配こそ感じるが、視得るとまではいかない。
言うなれば、結界は砂で、空間は砂の中に隠された箱のようなモノだ。
通常では、砂の上にいるからといって、箱は見えないだろう?」
「あー……」
 実に解り易い例えで、あーさでも理解が早い。
 あーさの扱いについて、二人にでも聞いていたのだろうか。
だが、職業を考えれば、元々のこの人自身の洞察力かもしれない。
「では、如何しますか?」
 そして、俺は改めて本題を問うた。
「残念ながら、俺にはこの結界をすり抜けて、空間から小僧達を助けるほどの霊力は無い。
だが、位置は大体解るし、常人に比べればこの『失敗作』も上手く使える」
 言いながら、チーフさんが例の『失敗作』を握り締めると、不思議な淡い光が漏れてきた。
「俺が今からこの『失敗作』を使って、結界に穴を開け、空間に干渉する。
そこで、お前達が空間に入り、小僧達を救い出せ。
多少なら、こっちからフォローもしてやる」
「そんな事が可能なんですか?」
「十分スゴいですよ!」
 チーフさんの説明に、俺達は驚きつつも感嘆した。
「いや、俺が凄いのではなく、それだけ『失敗作』の出来が良いんだ。
とりあえず、少しは見直してやれ」
「そうですね」
「善処します」
 チーフさんの言葉に苦笑いしつつ、俺達は相槌を打つだけに留めた。
実のところ、あの人の日頃の行い次第だと思う。
「話を戻そう。
俺は専門家ではないし、バレないようにするのにも限度がある。
あまり長くは持たんぞ。
時間にして、10分程度だ。
お前達、携帯は持ってるな?」
「はい」
「持ってます」
 説明を聞きながら、俺達はそれぞれ頷いた。
 だが、果たして空間内で繋がるだろうかという疑問が残る。
そんな俺の思考を読んだように、チーフさんが続けた。
「電波は無くとも、霊的な力は電波に近いとする学者もいる。
だから、外からは繋がらずとも、中でならお互い同士で繋がるかもしれん。
試してみる価値はある。
上手くいけば、小僧達との合流も早まるだろう」
「あ! そうですね!」
「なるほど、そういう……流石ですね」
 その指摘に、あーさは手を打ち、俺も感嘆を口にした。
言われてみると、勝手に電化製品が動き出したりする霊現象は、現実でもよくある話だ。
確かに、やるだけの価値はある。
「これでも、組織では頭脳労働担当だからな。
さて、時間が無い。
始めるぞ」
「「はい!」」
 そして、チーフさんに促され、俺達は頷いた。
 それから、その手にあった淡い光は勢いを増し、あっという間にスタンドライトほどに眩しくなっていく。
その光に呼応するように、辺りの空気が震え出し、耳鳴りのような音が響き渡った。
「!!」
 やがて、息を呑む俺達の目の前で、空間が明らかに歪み出した。
その歪みは、水たまりに水滴が落ちた時のような波紋を描き、見る間に円く歪みを増していく。
 やがて――時間としては、ほんの一分にも満たない間だったろうか。
今の俺達の目の前には、奇妙な穴のような歪みが浮かび上がっていた。
 その向こう側は見通せないが、目には見えずともこの先に二人がいるには違いない。
此処まで来たら、後は二人を無事に助け出すだけだ。
「……気をつけていってこい。
健闘を祈る」
「は、はい!」
「いってきます」
 そして、俺達はチーフさんに見送られながら、歪みの中へと入っていった。

***

チーフは、人材スカウトもしてるので、霊だけでなく人を視る目もあります。
なので、あーさの野生も見抜いたのでしょう。

あと、パラえもん先生は、アレでアレなだけで本当にスゴい人です。
色々あってぶっ壊れ気味ですが、大目に見てやって下さい。
そして、失敗作はアゾットの生り損ないだけあって、フラスコ本編でもそうだったように、結構な魔力を秘めています。
スポンサーサイト
旬の花時計
プロフィール

KUROZ

Author:KUROZ
黒いまめっぽいナマモノ。
最近、珈琲がうめぇ。
禿げ散らかすのが気になるお年頃。
まめっぷ。

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
カウンター
リンク
まめ投票
12時間ごとに1回投票可。
1人何回でもおk。
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
QRコード
QR
まめエイト
発生した金銭は制作費に使わせて頂きます。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。