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連載小話・十三話

だんだん暖かくなって参りましたね。
此方の連載の方もぼちぼちと終わりも定まり、後は書き上げるだけになってきました。
一方で、新作の方は未だ製作途中なので地道に頑張ります。

そして、何時も拍手と投票ありがとうございます。
月並みなお礼ばかりで申し訳ない限りですが、励みになります。

では、興味のある方のみ折り曲げからどうぞ。

 

※無断流用・転載厳禁です。

十三話・突入・七


※シノメ視点です。

***

 何とか開ける事の出来た戸をそっと引いていくと、その先は真っ暗だった。
周囲が暗い所為もあるんだろうけど、塗り潰されたように黒い。
 思わず、生唾を飲み込むオレを見てか、せーたろーが意を決したように口を開いた。
「じゃあ、ぼくから入るよ」
「え、でも……」
「流石に、二人一緒に入れるほど大きな入り口じゃないからね。
それに、このまま立ち止まってても仕方ないよ」
 躊躇うオレに対して、せーたろーがしっかりした口調で言った。
確かに、留まっているより、動いた方が良い……とは、思う。
「こ、怖くないの?」
 だけど、やはり恐怖が付きまとう――オレは、そっと問いかけた。
「……それはまぁ、怖いよ。
でも、何もしないままでいるよりは良いと思ってる。
……助けが、来るかもしれないしね」
 苦笑交じりに答えるせーたろーの表情は、諦めて無かった。
オレがいるというのもあるだろうけど、確かに未だ諦めるには早い。
「そっか……そうだね」
 だけど、その裏にはきっと彼の事があったから……そう思えば、オレもヘコんでいる訳にはいかない。
「よし、行こう」
 覚悟を決めて、オレは頷いた。
「うん、頑張ろう」
 せーたろーも少しだけ笑顔を見せた後で、頷き返す。
 それから、すぐに真顔に戻って、お互いに目の前の入り口へと視線を向けた。
奥が見えないというのは、実のところかなり怖い。
「……じゃあ、行くよ」
 その恐怖を振り払うように、せーたろーが一言告げてから開いた戸の枠に手をかけた。
「う、うん、気をつけて」
 オレも固唾を飲みながら、ゆっくりと進んでいくせーたろーを見守る。
「何も見えないし……横の壁、無いみたい」
「そうなの? でも、ホントに見えないね……」
 せーたろーの呟きを聞いて、背後から覗き込んで見ても、相変わらず景色は黒い。
全く以って、趣味の悪いお化け屋敷だった。
「とりあえず、真っ直ぐ行くからね」
「オ、オッケー」
 そうして、せーたろーの全身が通路に入っていくのを見計らい、オレもまた入り口を潜った。
(うわ、黒ッ!)
 入ってみると、前後左右が解らないくらいに黒い。
暗いんじゃなくて、本当に黒い。
 こんな中に入っていけるせーたろーの度胸を、素直に尊敬してしまう。
外見は大人しそうだけど、中身は本当に漢前だ。
 でも、よくよく考えれば、だからこそあの件を経て立ち直れたのかもしれない。
オレなら、ずっと引き摺ってしまいそうだ。
「……シノメくん、静かだけど大丈夫?」
「! あ、うん、大丈夫。
考え事してただけだから」
 そんな諸々を事を思い返していたオレは、せーたろーの声で我に返った。
「それなら良いけど、何かあったら言ってよ?」
 全く以って、せーたろーは出来たナイスボーイだ。
「うん、ありがと。
せーたろーも気をつけて進んでね」
「解ってる、ありがとう」
 こんな黒い中では、薄っすらと前を行くせーたろーのパーカーが見えるだけで、他は何も見えない。
そうなると、確かに黙っていると逆に不安にもなるだろう。
 大体にして、こんなところに長時間いたら頭がおかしくなりかねない。
そのくらいに、此処は薄ら寒いところだった。
(ホント、せーたろーがいてくれて良かったよ……)
 巻き込んでしまって申し訳ないものの、心の底からそう思う。
オレだけだったら、きっと泣き喚いて心が圧し折れてたところだ。
「せーたろー」
「うん?」
 声をかければ、せーたろーの声が返ってくる。
そんな小さな事が、凄く嬉しかった。
「……オレ、せーたろーが親友で良かったよ」
「何、やぶからぼうに。
そんな事言っても、何も出ないからね」
 しみじみと言えば、少し苦笑の混じった言葉が返ってくる。
「そんなんじゃないって。
ホントに良かったって思っただけなんだから」
「そう? ……だけど、ぼくも同じだよ」
 振り返っても入り口さえ見えなくなった闇の中、こんな他愛ないやり取りが出来る事に感謝した。
「……あ、何か見えてきたよ」
 そんなこんなで、与太話で気を紛らわせながら進んでいたら、せーたろーがふと声を上げた。
「え? 出口?」
「かもしれない」
 せーたろーの背後から眼を凝らしてみると、確かに薄っすらと四角い枠のようなモノが見えた。
「良かった! こんなとこを歩き続けるのはやだもんね」
 思わず、声が大きくなってしまったけど、それは仕方ない。
「ホントにね」
 そして、せーたろーも安堵混じりに一息吐いた。
「でも、未だ油断は出来ないからね」
 しかしながら、気を抜かない辺りは流石だった。
「あ、うん、そうだね。
やっぱり、せーたろーは頼りになるなぁ」
「そんな事言っちゃって」
「嘘じゃないよ、ホントだもん」
 心なしか、テンションも少し上がってお互い口が軽くなる。
それは、空元気もそれなりにあるかもしれないけど。
「とにかく、ゆっくり行くからね」
「うん」
 そして、確認をし合った後で、オレ達は出口と思しきところへ向こう事にした。
「あ、やっぱり出口っぽいよ!」
 ゆっくりと進んだ先――漸く、その形がはっきりと見えてきて、オレの声も大きくなる。
見えてきたのは、戸こそ無かったものの、オレ達が求めた出口だった。
「そうだね。
ただ、ヘンなところに出ないと良いんだけど」
 その一方で、せーたろーがクール過ぎて困る。
「ヘンなフラグ立てないでよぉ……」
 出鼻を挫かれて、オレは思わずぼやいた。
「……ねぇ」
 そんな折に、ふと背後から声がした。
聞き覚えの無い、やけにかすれた声だった。
「え?」
 振り返った後で、気づいた。
何で、せーたろーが前にいるのに、声が背後からするんだろうって。
「――!」
 そう思った瞬間、視界がブレた。
頭をじかに揺さぶられるような感覚と一緒に。
 その何とも言い難い気持ち悪さに、オレは声も上げれずに頭を抱えて膝をついた。
それから、どのくらい経っただろう。
「……え……?」
 気持ち悪さからやっと解放されて顔を上げると、だだっ広い広間のようなところにいた。
景色が見える分、黒いよりはマシだけど――何が何だか解らない。
「せ、せーたろー?」
 そして、親友を探すも……いない。
「何処!? せーたろー、何処にいるの!?」
 声を上げても、答えは返ってこない。
ヒトの気配さえ無い。
 そして、暫く辺りを歩いてみても、景色が変わらない。
動いているようで、その実動いていないという状況に、どんどんと混乱してくる。
「何? 何なの? 一体、何がしたいんだよ!?」
 半狂乱になりながら、オレはただ喚くしかない。
「ねぇ、」
 そのオレの背後で、またあの声がした。
しかも、すぐ耳元で。
「――」
 振り返る事も出来ず、そのまま身体が硬直する。
冷えた脂汗が、背筋を流れていく。
 気持ち悪い。
言い表せないくらいに、気持ち悪い。
「ねぇ、聞こえてるでしょう?」
 喉を絞められたようなざらりとした撫で声に、鳥肌が立つ。
気持ち悪い。
頭がおかしくなりそうなほどに、気持ち悪い。
「ねぇ、ねぇ、」
 不意に、声が重なった。
「ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、」
 ざらり、ざらりと撫でてくる声に、正気が削られていく。
だというのに、声が重なるように増えていく。
女の声、男の声、誰かの声。
 増える。
声が増えていく。
心をざらざらと削り取っていくように、耳の裏で声が増え続ける。
 気持ち悪い。
頭の中でさえ、声がする。
耳を塞いでも聞こえてくる。
 助けて。
誰か、助けて。
もう嫌だ、何でこんな目に遭わなくちゃいけないんだ。
「ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、」
 嫌だ。
もう嫌だ、止めてくれ。
頭が、おかしくなってしまう!
 がん、
 思わず、頭を床に打ち付けた。
痛い。
嗚呼、大丈夫だ。
 がん、
 痛い。
未だ、大丈夫だ。
 がん、
 痛い。
でも、痛いうちは、未だ生きてる。
「ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、」
 声が、止まない。
増える。
増えていく。
今、もう何人いるのか解らない。
 如何しよう。
如何すれば良いんだろう。
せーたろーも、先輩達も、皆も誰もいない。
 このまま、オレは此処でおかしくなっちゃうんだろうか?
(……そうかもしれない……)
 だって、声は増えていくし、何が何だかもう解らない。
嗚呼、だけど――このまま死ぬのは、嫌だ。
スゴく嫌だ。
 大体、何で死ななくちゃいけないんだろう?
そもそも、死ぬって何?
この世からいなくなる事?
いなくなって、その後は――?
 ズズンッ!
「ッ!?」
 沈み込んでいく思考が、衝撃で身体ごと浮き上がった。
これは、せーたろーと一緒に個室に入った時の、あの衝撃と同じだった。
「……あれ? 声が、しなくなった……」
 体勢を崩したものの、起き上がってみて気づく。
アレだけ頭の中をこね回すように響いていたざらりとした囁きの合唱が、消えていた。
「……何でだろ? ッ、それより、額いったぁ……」
 正気を保つためとはいえ、床に額をぶつけていたためか、じくじくとした痛みに泣きそうになる。
だけど、あのままおかしくなるよりはマシだ。
(……よく解んないけど、あの衝撃のお陰で助かったみたい……)
 額をさすりつつ、安堵のため息を細く長く吐き出した。
 周囲の景色は、相変わらず変わっていない。
黒一色よりはマシではあるものの、延々と同じというのも嫌なものだ。
「……如何しよ……」
 ぼやいたまま、その場に座り込む。
立ち上がる気力が無い。
(……せーたろーは、何処にいるんだろう?
せーたろーも、同じような事になったのかな?
大丈夫だと良いんだけど……)
 ぐるぐると思考が降っては消えていき、ぼんやりとしてくる。
さっきのアレで、大分精神力が削り取られたようだった。
「……少し、休もう。
何か、疲れちゃったよ……」
 オレは、ぼんやりとしていく意識に任せて、目蓋を閉じた。
此処まで来たら、もう如何にでもなれという気分だった。
 ――そうして、オレは意識を手放した。
眼が覚めた時、この悪夢も覚めれば良いのと淡い期待をしながら……。

***

欝やグロい感じの展開は、何処までやって大丈夫なのか人それぞれなので、本当に難しいと思っています。

そして、この連載小話も気がつけば、鏡花水月以上のテキスト量になっていました。
何時も拍手して下さる方々、ありがとうございます。
ご感想を下さる方々、とても励みになります。
素人文章で恐縮ではありますが、最後まで楽しんで頂ければ幸いに思います。
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プロフィール

KUROZ

Author:KUROZ
黒いまめっぽいナマモノ。
最近、珈琲がうめぇ。
禿げ散らかすのが気になるお年頃。
まめっぷ。

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