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連載小話・十六話

今日からお彼岸ですね。
何だかんだで色々と支度があったもので、小話の続きを書いている余裕が無かったため、今し方まめりながら書き上げました。
筆が乗ってくれて助かりました・・・。
書けない時は、本当に書けないのですよね。
今回から最終章となり、もう片手で足りるくらいで終わる予定ですので、もう暫くお付き合い下さい。
あ、そういえば、何だかんだで桜の時期に終わりそうですね。
想定は全くしていなかったのですが、それはそれで一興というものです。

また、何時も投票・拍手して下さる方々、ありがとうございます。
月並みな言葉になってしまい、申し訳ないです。
では、興味のある方のみ、折り曲げからどうぞ。

 

※無断流用・転載厳禁です。

十六話・追い手に於いて・一


※セイタロウ視点です。

***

「ねぇ、」
 背後から、ずっと声が追ってくる。
「ねぇ、待ってよ」
 誰の声かも解らない。
実のところ、それが本当に声なのかも解らない。
「ねぇ、行かないでよ」
 だけど、それ……いや、それらは、ぼくの後ろ髪に手を伸ばし、引き摺り込もうと追ってくる。
「ねぇ、ねぇ、」
 何時からこうなったのかといえば、それほど前ではなかった。
それこそ、ほんの数分前だったはずだ。
 けれど、わき目も振らずに暗闇の中を逃げるぼくにとっては、その数分がとても長く思えた。
「ねぇ、ねぇ、ねぇ、」
 シノメくんがいないと気づいて、振り返った瞬間だった。
目の前にあったはずの出口は消え去り、ぼくは暗闇に一人残されていた。
 そして、降って湧いたように耳元で囁かれた声に、ぼくは総毛立った。
真綿で包んだ針のように鼓膜を叩くそれは、人語ではあるものの、この世のモノではない――聞いた途端に、そう理解した。
 逃げたのは、多分本能。
実際、今も立ち止まろうとは思わない。
 それは、ぼくは他の人よりは怪奇現象に耐性があるかもしれない。
だけど、慣れているかと言われたら、それは違う。
「ねぇ、待ってよ」
 むしろ、慣れてたまるかと思う。
シノメくんの事も気になってしかたない。
だけど、今のぼくには逃げ続けるしかなかった。
「ねぇ、置いていかないでよ」
 それにしても、背後から追う声は、何なんだろう。
まるで、懇願(こんがん)するかのようで、思わず振り返ってしまいたくなる。
「ねぇ、助けてよ」
 ……不意に、思い出してしまう。
あの日、あの時、あの場所で起こった事を。
 降り止まない雨。
突然の轟音。
そして、暗転する視界。
 ひどい事故だった。
今でさえ、その時の惨状を思い出すのは辛い。
だけど、自然の災害なのだから、恨みをぶつける訳にはいかない。
 そう、解っている。
解っているけれど――後悔は、未だに止まない。
その重圧に耐え切れずに、ぼくは一度全てを忘れた。
彼は、許してくれたけれど……本当に、ぼくはひどいヤツだった。
「ねぇ、如何して?」
 ……嗚呼、如何してだろう。
あの時、脱出するために行動しようとした彼を止めていれば。
たった一言言えていれば、変わったかもしれないのに。
「ねぇ、如何して……助けてくれないの?」
 そう、助けられたのは、ぼくだけだった。
それなのに、ぼくは何も出来なかった。
ぼくが、止めるべきだったのに。
ぼくの所為で――。
『ダメだよ』
 思考が泥のように色を失い、走っていた足がその速度を落とそうとした時だった。
何処からか、声がした。
懐かしい、声だった。
「――ッ、」
 一度は忘れた。
けれど、今はもう忘れようも無い声だった。
『生きて』
 声がする方から、ほのかな光が差してきた。
「ッ、――くん、」
 ぼくは、その光に精一杯手を伸ばす。
伸ばすべき時に伸ばす事が出来なかった手を。
『約束を……夢を、叶えてよ』
 そして、光に手が届きそうになった瞬間――確かに、ぼくは見た。
あの日、あの時、あの場所で喪った親友が、微笑んでいたのを。

***

※此処からシノメ視点です。

「うわッ!?」
 携帯を手に、相も変わらず長い廊下を走っていたオレは、目の前に現れた光につんのめった。
その光は、最初はほんの少し辺りを照らしていただけだったけど、徐々にその強さを増していった。
「え、何? この光――」
 思わず挙動不審になり、如何するべきかと迷っていると、光が一際眩しくなった。
「!」
 その時、光の中に人影のようなモノが見えた。
同時に、オレは思わず手を伸ばしていた。
 何でそうしたかなんて、解らない。
ただ、そうしなければならないような気がしたんだ。
「ッ!」
 光に伸ばしたオレの手が、何かを掴んだ。
しっかりと掴み返される熱を持ったその感触は、誰かの手――思うと同時に、オレはそのまま力一杯引いていた。
『後は、頼むよ』
 その誰かの手が見えた瞬間に、誰かの声がした。
聞き覚えが無いはずなのに、何故だか懐かしい感じがする声だった。
 だけど、その余韻に浸る余裕も無く、ずるりと光から出てきた誰かの姿にオレは驚いた。
「! せーたろー!?」
「え、シノメくん!?」
 オレ達は、手を掴み合ったままでお互い同じようなリアクションで声を上げた。
 気が合うね、オレ達。
いや、そうじゃなくて。
「え? ちょ、何で? 何でまた、光からせーたろーが?」
 そう、問題はそこだ。
あと、激突は避けれたから良かった。
「それより、無事だったんだね。
怪我も無いみたいで、安心したよ。
とりあえず、落ち着いて」
 一方のせーたろーは、相変わらずのクールさだった。
オレがテンパり過ぎてて、逆に我に返ったのかもしれないけど。
「え? あ、うん、そうだね、ゴメン。
その前に、手も放そっか」
「そうだね」
 そして、オレ達は一先ずガッツリと掴み合っていた手を放し、改めて向き直った。
「えっと、それで、一体何があったの? 何で光から?」
「うーん……とりあえず、お互いの出来事を話そうか」
 未だちょっとテンパったままのオレを他所に、せーたろーが落ち着いた様子で提案した。
相変わらずのステキ度胸だ。
「あ、それが良いね。
そうしよう」
 オレは、徐々に落ち着きを取り戻しながら、頷きを返した。
確かに、その方が建設的というヤツだ。
 それから、オレ達は手短にバラバラになった時の事を話した。
オレの方は、あのおばあちゃんの話をしつつ、受け取った携帯を返しながら。
「……そんな事があったんだ。
ぼくの方は有効なモノは得られなかったけど、シノメくんの方はかなりの収穫だったね。
携帯も無事で良かったよ」
「うん、ホントに良かった。
おばあちゃんに感謝しないと。
……で、アイツの事は……未だ本当に解ったとは言えないけど、ホントに人間じゃないみたいね」
 正直、それが残念だという気持ちは、今も残ってる。
だけど、此処まで来るともう受け入れるしかないとも解っていた。
「うん……。
じゃあ、あの声も……そのおばあさんみたいになった人達なのかな?」
 頷きながら、せーたろーが言葉を選んで呟く。
「かもしれない。
ただ、おばあちゃんとは違ってアレだから、ちょっとお近づきにはなりたくないけどね……」
 その呟きに、オレも相槌を打ちながら濁す。
助けられるのならそれが一番だけど、オレはそこまでスゴくないし、力も無い。
それが解らないほどに、子供でもなかった。
 哀しいけど、それが現実だ。
そろそろ、腹を決めないといけない。
「あ、あとね、携帯に先輩から着信があったんだ。
もしかしたら、来てくれるかも」
 それを踏まえつつ、オレは一呼吸を置いてから、話題を変えた。
「……そうなんだ。
じゃあ、何とかして出口を見つけないとね」
 せーたろーもまた、その空気を察してか、ただ頷くだけにしてくれた。
ホント、オレには勿体無いくらい、よく出来た親友だ。
「うん、アイツもいないみたいだし、チャンスは今しかない。
そろそろ行こう」
「そうだね」
 そして、オレ達は頷き合い、再び二人で足を踏み出した。
廊下は、相変わらず長くて奥も見えない。
 だけど、今は恐怖は殆んど無くなっていた。
その代わりに、胸にあるのは……脱出への希望と、おばあちゃん達とアイツへの遣る瀬無さだった。
 今、心に決めた事は、二つ。
一つは、脱出する事。
もう一つは――。

***

死して尚、視えずとも彼等は共に在ります。
今回から最終章ですが、この章の意味は終わった後に書きたいと思います。
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Author:KUROZ
黒いまめっぽいナマモノ。
最近、珈琲がうめぇ。
禿げ散らかすのが気になるお年頃。
まめっぷ。

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