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連載小話・十七話

遅くなって申し訳ないです。
暖かくなると何だかんだでやる事が色々あって、またも今し方書き出して書き終わったばかりのをそのまま載せます。
推敲していないので、ちょっとアレなところがあったら、後ほど手直しするかもしれませんのでご了承下さい。
何だか急ぎ足で申し訳ない限りですが、もう少しで終わるのでお付き合い下されば是幸いです。

それでは、興味のある方のみ、折り曲げからどうぞ。
※四月二日に少々修正しました。

 

※無断流用・転載厳禁です。

十七話・追い手に於いて・二


※龍樹視点です。

***

 俺達は、暗い山道をひた走っていた。
チーフから告げられた時間まで、あともう少し。
それまでは、色々な意味で時間を稼がなければならない。
 しかし、その間にも背後から無数の気配が追ってくるのが解る。
隙あらば飛び掛ってもくるそれらを避けながら、地面に足を取られないように走るのは、かなり困難だ。
 その上、相手は霊体。
向こうの攻撃は通るが、此方の攻撃は通常では通らない。
だからといって、キリも無い相手に失敗作の力を使う訳にもいかない。
 確かに、これは俺達向けの作戦内容だ。
そう思いながら、並走する立案者へと視線を移せば、丁度此方を振り返った。
「そろそろ、良いだろう」
 言うなり、結さんは足を止めた。
俺もつられて足を止めると同時に、結さんがそのまま踵を返す。
 それに倣(なら)えば、無数の怪異と改めて正面から見合う事になった。
とはいえ、霊感の無い俺の目には、黒い靄が地面から湧いている風にしか見えない。
結さんにしても、大差は無いだろう。
 だが、その靄の奥――そこに、一際大きなモノが、いた。
(! アレ、か……)
 気配は紛れてしまっているが、姿形は素人目にも解る異様なモノだった。
靄というより生きている黒煙のようで、何とも忌々しく蠢いている。
 だが、アレが此処に来たという事は、作戦としては成功だ。
後は、如何するか――それは、隣の彼(か)の人次第だろう。
 そう思いつつ、横目で見やれば、相も変わらず涼しい顔をしている。
尤も、この人が血相を変えるところなど、俺は見た事も無いのだが。
「ニンゲンにしては、大した度胸じゃないか。
しかし、惜しいねぇ。
もうちょっと霊力が強ければ、考えたんだけどなぁ」
 そして、怪異が人語を発した。
声としては、若い――それこそ、逆平達くらいだろうか。
 聞きようによっては、人懐こくも聞こえるが、状況を知った今は耳障りでしかない。
「霊力が無い獲物は、力を取り込めないからさぁ。
困るんだよねぇ」
 くつくつと喉の奥で嗤(わら)いながら、それは言う。
「だから、あの子達を狙ったか」
 静かにそれを聴いていた結さんが、やにわに口を切った。
「そう、そうなんだよ。
若くて霊力もあるのは、最高の獲物でさぁ。
そうして、じっくり壊してやれば――ククッ、それはまぁ、言わないでおこうか」
 その黒煙のような図体を蠢かせ、それは嘲笑した。
「古巣に帰ってきたら、偶然目に付いてねぇ。
丁度代え時だったから、たまには此処も使おうかと思ってさぁ。
いやいや、今も昔もニンゲンは騙し易くてイイよねぇ!」
 黒板を爪で引っ掻くような不快な嗤(わら)い声が、暗い山の中にこだました。
「やはり、所詮は怪異か……」
 今の心境を一言で表すならば、不愉快に尽きる。
その憤りを堪えながら、俺は隣へと視線を向けた。
「……一つ、訊いても?」
 一呼吸おいてから、結さんが問いを投げた。
「まぁ、イイよ。
折角だから、冥土の土産に答えてあげようじゃないか」
 対する怪異は、鷹揚(おうよう)にも頷いた。
「お前が、薄墨の怪異か?」
「あー……あぁ、薄墨、薄墨ねぇ。
懐かしい名だ。
その名を聞くのは、幾星霜(いくせいそう)ぶりだねぇ」
 結さんが問えば、怪異は感慨を含ませて独り言(ご)ちた。
「……だけど、オレじゃぁないんだよなぁ。
まぁ、同じ穴の妖(あやかし)であるのは、事実だけどねぇ……」
 囁くように、嘲笑うように、怪異は言う。
「お前ではない……?」
「……知ってるかい? この山、一度は燃えたんだよ」
 俺の呟きに、怪異がやけに優しい声で語りかけてきた。
「貂(テン)を殺したから火難に遭った……などと言われている程度には、知っている」
 怪異の言葉に、結さんが含みを持たせて答える。
すると、怪異はまた喉で嗤った。
「……イイねぇ、冗談の言えるニンゲンは嫌いじゃないよ。
じゃあ、オマケにもう少し話してあげよう。
昔、山の麓(ふもと)に村があったんだ。
数十人くらいの、ちっぽけで小さな村さ」
 そして、怪異は語り出した。
「山には、それこそ貂(テン)や狐、狸、穴熊、鼬と色んな獣が住んでてねぇ。
それを狩って、暮らしてた猟師も珍しくなかった。
でも、大半の猟師は山に敬意を以って狩りをしてたものさ」
 怪異が語っているのは、結さんが話した謂(いわ)れを思い出させた。
貂(テン)を殺したから火難に遭った――今また口にされた言葉が、脳裏でリフレインした。
「だけど、中には金目当てで狩るようなニンゲンもいた。
見てくれと口先はなかなかだったけど、中身は最悪なニンゲンでねぇ。
……そのニンゲンが、燃やしたのさ」
「!」
 途端に、空気が変わった。
周囲の靄達が臨戦態勢を取り、重く沈んだ殺気が圧し掛かってくる。
「それはそうさ、獣が自分の住処を焼く訳が無い。
山を焼かれた獣は、如何すれば良いと思う?
焼かれて死ぬか、他の住処を探すかだ。
……冗談じゃない」
 その声に滲むのは、憎悪だった。
恐らく、その人間にしても山を焼くつもりでなく、いぶして誘き寄せる程度のつもりだったのだろう。
俺達も狩りをする事があるため、恐らくそれで間違いない。
 だが、火の動きは予想外で、事態は最悪な方向へ向かってしまった。
そこへ来て、例の噂が丁度良く流れた。
だから、それに便乗して、有耶無耶(うやむや)にした――というのが、真相なのかもしれない。
 しかし、何にしても遣る瀬無い話だ。
何時の世でも、過ぎた欲望は害を及ぼす存在でしかないようだ。
「……でもねぇ、その何(いず)れも択ばなかったヤツ等がいたのさ。
共食いをしたんだよ、生きるために。
そうして、同族だけでなく、ニンゲンまでも喰った。
……山が焼けた八つ当たりやら腹いせやらで、とにかく喰いまくったのさ」
 殺気が、膨れ上がった。
突き刺すような気配は、常人ならば気絶でもしそうなほどの圧迫感を以って襲ってくる。
「……それで、化生(けしょう)したのか」
 その最中でも佇まいを崩す事無く、結さんが口にした。
「ニンゲンにしては、よくモノを知ってるじゃないか。
そう……オレもその中の一匹さ。
ただ、さっきも言った通り、薄墨のヤツはオレじゃないけどね」
 化生――チーフ曰(いわ)く、長く生きる事で力を得て変ずる事と、何らかの転機を経て変ずる事があるという。
この場合では、後者か。
 村がその後如何なったのかは、もう察するところで言葉も無いが……薄墨色の獣については、未だ明らかになっていない。
怪異には違いないようだが、それ以外にも不明瞭な部分もある。
 それは、今から解るだろう。
「さて、話が長くなったね。
……そろそろ、切り上げようか。
念仏を唱えるくらいの時間は、十分あげただろう?」
 そして、声と共にざりざりと靄が地を蹴り出した。
まさに、一瞬即発の空気が漂い、もう一声あげれば此処は戦場になるだろう。
 だが――。
「あぁ、十分だったよ」
 答える結さんは、ゆるやかに笑んだ。
実に穏やかに言葉を吐きながら。
 ……だが、俺には解っていた。
この人がこういう笑い方をする時は、大体相手にとってよろしくない時だと。
「お前の化けの皮を剥がす準備をするにはね」
 言うなり、手にしていた失敗作を落とし、踏んだ。
 チリ……バチンッ!
 途端に、劈(つんざ)くような音が鳴り響いた。
そして、張られていた結界に亀裂が入り、靄のような無数の気配が霧散していく。
 山全体の結界全てを壊したという訳ではないが、一部分でも壊せばそれだけ効力は弱まる。
これで、俺達だけでなく、神代達やチーフも大分やり易くなったはずだ。
「なッ!? 結界が……!」
 一方で、これには流石に怪異も驚いたらしい。
というか、予想もしていなかったのだろう。
 霊的な力同士をぶつける事で、結界を壊す――怪異退治でよく使う手の一つだった。
ただ、現状では逃げつつ一定の場所に某失敗作を設置しながら、各所で力が満ちるまで待たねばならない欠点もあった。
 囮かつ内部から干渉するという作戦の内容の実際は、そういう事だった。
だからこそ、相手がしゃべり上戸で此方が助かった。
 かくして、予定の時間までに此方の役目は粗方こなしたのだから、チーフも無駄な心配をする必要もなくなり、本格的に動けるはず。
後は、逆平達が無事に見つかっている事を願うばかりだ。
「チッ、ニンゲンが此処までやるとは……!」
 歯痒そうに呟く黒煙のようなそれが薄まり、中から薄っすらと人影が見えた。
恐らく、逆平達を騙していた人間の姿だろう。
 確かに、先の話が事実ならば、人間をエサとしか見ないのも致し方の無い事だ。
欲まみれで色々な物を奪い続けている人間である俺達は、何も言うべきではない。
 だが、だからといって、此処で逆平達を見捨てる事など出来ない。
対する理由は、それで十分だった。
「……さて、それでは始めようか。
念仏を唱えるには、十分だっただろう?」
 そして、スペアの失敗作を手に握り込みながら、結さんが口許だけで嗤った。
見るだけで背筋が寒くなるような笑みだった。
「……悪いが、覚悟してもらおう」
 俺もまた、控えめに同じように失敗作を手にしながら告げた。
同情の余地はあれど、それはそれでこれはこれだ。
この怪異には、未だ吐いてもらうべき事もある。

 ……追っていたモノは追われ、追われていたモノが追う。
この事件の終わりは、間近だった――。

***

章の意味が此処で判明したので、ちょっと書きます。
「追い手」はそのまま追っ手の事で、「於いて」は時や場合などの事柄を表しています。
なので、追っ手も場合によっては……という意味合いで付けてました。
大分早く判明したなあと自分でも予想外でしたが、行き当たりばったりで書いてるからそれもそうかと思ってみたり。

尚、前と今回はホントにぶっつけでその場で書いてるため、色々アレかもしれませんがご容赦下さいorz
あともう三話前後で終わりますので、もう少しお付き合い下さい。

追記にて。
ちょっと結界云々の辺りに素で書き忘れていたところがあったので、修正しました。
gdgdで申し訳ありませんorz
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KUROZ

Author:KUROZ
黒いまめっぽいナマモノ。
最近、珈琲がうめぇ。
禿げ散らかすのが気になるお年頃。
まめっぷ。

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