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連載小話・十八話

モノクロエイプリル製作の傍ら、何とかかんとか此方は無事終わりそうです。
もう少しばかりお付き合い下さい。

それでは、興味のある方のみ、折り曲げからどうぞ。

 

※無断流用・転載厳禁です。

十八話・追い手に於いて・三


※シノメ視点です。

***

 ピピピピッ
 嫌になるほど長い廊下をせーたろーと二人で進んでいると、突然に携帯が鳴った。
「ふへおッ!?」
「ッ!!」
 鳴るとは思いもしなかったオレ達は、それはもう驚いた。
せーたろーは、肩を跳ねさせたくらいだったけど、オレはヘンな声を出しながらちょっと跳んだ。
 いや、だってこんなところで携帯が鳴るとか思ってなかったから……。
「シノメくん、携帯見て」
 そんなオレはさて置き、相変わらずクールなせーたろーは、颯爽と携帯を取り出してからそう言った。
「う、うん」
 若干、驚きが引かないまま、オレもまた頷いてポケットの携帯を手に取る。
未だに鳴り響く呼び出し音を聞きながら、控えめに光る液晶を見ると、そこには見慣れた名前があった。
「あ、宮川先輩からだ!」
「ぼくの方は、神代さんだよ。
同時にかかってきたみたいだし、一緒にいるんじゃないかな?
とりあえず、出よう」
「そ、そうだね!」
 感激にちょっと涙目になりつつ、オレはせーたろーの言葉に頷いて、少し震える手で携帯の通話ボタンを押した。
せーたろーもまた、同じようにして携帯を耳に当てた。
「も――」
『シノメクン!? 生きてる!? セイタロウクンは!?
あ、元気!? 元気なんだね!! じゃあ、お腹空いてる!? あたしも空いてる!!』
 此方が声を発するより早く、矢継ぎ早に携帯から大きな声が響いた。
「マ、マジで宮川先輩なんすね……!」
 ちょっと鼓膜がキンキンするものの、そのテンションがらしくて色んな意味で泣きそうになった。
「ええ、シノメくんも一緒です。
わざわざありがとうございます」
 一方のせーたろーは、実にクールだった。
まぁ、そもそも神代先輩が相手なら、それもそうかもしれないけど。
『あべしッ! ちょっと、しーやクン! 何で頭掴むの!?』
「あ、そちらも二人とも一緒なんすね」
 まぁ、宮川先輩を一匹で野に放ったらそれはもう色々大変なので、それはそうかもしれない。
何時もならなまぬるく見守るところだけど、今はそれも微笑ましくてほっこりした。
『う、うん、まぁね。
それより、二人とも無事で良かったよぉ!
急に何かあったみたいだっていうから、心配したんだから!』
「すいません、色々ご迷惑を……。
でも、何で解ったんですか? それに、如何やって電話を?」
『それなんだけど……長くなるし、時間も無いから後でにしようって。
今は、合流しないとね!』
 訊いた後で、宮川先輩がそう言った。
その言葉に、オレは驚いた。
「え!? 此処にいるんすか!?」
『うん、実はね。
その辺も後で話すけど……二人は、どの辺りにいるの?』
 言われて周囲を見渡しても、あるのは長い廊下だけだ。
何処のどの辺かは、全く解らない。
「あ、えっと……廊下、なのは確かなんすけど、具体的に何処とは……」
「! シノメくん、あれ見て」
 オレが言いよどんでいると、せーたろーが何かに気づいたように声を上げた。
「え? あ!?」
 その指差す方を見て、オレも何度目になるのか忘れたけど、また驚いた。
オレ達が今まで歩いてきた方の廊下が、まるでぼかしたように歪んでいた。
「何これ、景色が歪んでる……」
『わぁ、こっちも何かヘンになってるよ!』
 呟くオレと同じに、宮川先輩も驚いたような声を上げた。
という事は、お互いに行ける方向は一つだけになったという事だろうか。
 ただ、気になるのは……それが良い事か悪い事か、だ。
『今、セイタロウクンにもしーやクンが言ってると思うけど、そのまま行ける方にダッシュしちゃって。
急いだ方が良さそうだからね』
「……そうっすね。
場所は同じみたいっすし、何処かで合流するかもしれないっすし」
 宮川先輩――というよりは、神代先輩の提案に、オレも頷く。
このまま歪みに飲まれて、またヘンな場所に飛ばされたら面倒だ。
 そう思いながらせーたろーの方に視線を向けると、同じように思ったのか此方に頷いて返してくる。
『うん、そういう事で一度切るからね』
「りょーかいっす! あ、改めてありがとうございました!
ホントに、嬉しかったっすよ」
『やだなぁ、生臭いよ! そんなの気にしない気にしない。
じゃあ、また後でね!』
 切る前にお礼を言うと、実にらしい返答と共に通話が切れた。
 如何して来れたのかとか、それは水臭いじゃないかとか、色々疑問はあるものの、それは後で良い。
ただ、此処まで助けに来てくれた事が凄くありがたくて嬉しかった。
「良い人達と出逢えたよね、ぼく達」
 そして、同じように通話を切ったせーたろーが、顔をほころばせた。
「うん、ホントに」
 オレもまた、それに頷いた。
今更ながらに込み上げてきた感慨に、ちょっと鼻水が出てきた。
ティッシュ何処だっけ?
「あ、見て。
何だか歪みが広がってない?」
 その一方で、やはりクールなせーたろーがふと指摘した。
確かに、よく見るとさっきよりぼやけてきている気がする。
「……そう、だね。
何か妖しい感じだし、触らないでおこう。
今は、合流しないと」
 それに頷きながら、オレはせーたろーを促した。
此処にいても始まらないし、時間も惜しい。
「そうだね、行こう」
「うん」
 そして、オレ達は互いに頷き合ってから、長い通路を走り出した。

***

※此処から第三者視点です。

 ――彼は、此処でやっと気づいていた。
自分は、選択を間違えてしまっていたと。
あの少年達に目星をつけた事自体が、そもそもの間違いだったと。
 甘かった。
もっと、入念に少年達の周辺を調べておくべきだった。
相手がたかだかニンゲンの子だからと、甘く見たのが間違いだった。
 ほの赤い光が、闇の中で鈍く光っている。
たいまつのような、辺りを照らす光ではない。
闇に滲むろうそくのような、密かな光だった。
 その光が、近づいてくる。
それを持つニンゲンが、彼へと近づいてくる。
 彼の心に今渦巻くのは、焦燥だった。
如何して、こんな事になった?
如何して、こんなニンゲンが今もいる?
 世は、変わった。
ニンゲン達の暮らしも、得物も、その有り様も。
だから、彼等のような異質な存在を倒すのを生業とする退治屋などは、もういない。
いない……はずだった。
 だが、此処にいた。
現に、こうして追われる身となっている。

 ――彼は、かつて薄墨の何某(なにがし)と呼ばれたソレでは無い。
幾年も昔、この山に君臨していた獣の妖(あやかし)がいたのは、事実だ。
 山を焼かれ、理性を狂気に変え、同胞もニンゲンも喰いまくった悪食の獣。
その正体は、伝手(つて)に聞くような貂(テン)ではない。
薄墨の名が示す通りの毛色を持つ狸――それこそが、真の薄墨の獣の正体だった。
 ただし、狸というにはあまりにも巨大で、強靭で、凶悪であった。
それがゆえについた名こそが、薄墨なのだ。
 彼は、そんな薄墨のおこぼれに与って、運良く化生した小物の一匹だった。
だからといって、彼は狸ではない。
 同じ穴の狢(ムジナ)という言葉がことわざで知られるが、此処ではそれと少し違う。
薄墨の穴にこっそりと共生し、ひっそりとそのおこぼれを喰らう、そんな意味の狢だ。
 そんな狢である彼の正体こそは、穴熊だ。
狐七化け、狸八化け、貂九化けとも称されるが、穴熊である彼にはそこまでの力は無い。
術一つにしても、手の込んだ仕込みをして媒体を介さねば使役する事もままならない。
永く生きているとはいえ、素の能力が秀でていない彼は、その程度だった。
 そんな彼が薄墨に勝っていた事が、一つだけあった。
運が良い――その一つに限る。
 だが、そのお陰で彼は今日まで甘い汁を吸って生きてこれた。
山を焼かれて尚、餓える事も無かった。
薄墨の何某と似たような姿形をしていたがために、無用な諍(いさか)いも無かった。
そうして、この山もまた、自分の物と出来た。
 そう、当の薄墨は、もういない。
確かに、薄墨は強かった。
山を焼いた男がいた里を一つ潰し、その魂を巣に閉じ込めるほどに。
 実のところ、彼が家として誘い込んだのは、元は薄墨が作った巣だったのだ。
妖にとって、ニンゲンの魂はご馳走でもある。
だから、喰い切れなかった魂を閉じ込めてあった――喰う前に、当の薄墨はいなくなったが。
 そうして、狸の習性よろしく、巣には無数の空間があった。
それを全て把握しているほど、彼は力ある妖ではなかった。
そして、薄墨がいなくなったため、魂達は解放される事無く、今も蟠(わだかま)っている。
 ……では、何故薄墨は過去のモノとなったのか。
その理由は、簡潔だ。
当時退治屋と呼ばれていたニンゲンに倒され、消滅したのだ。
 だから、それを知る彼は、山を奪った後も大人しくしていた。
時には山を離れ、ニンゲン社会に紛れながらも。
共生を本能とする穴熊らしく、細々と、転々と。
 だが、所詮は薄墨と同じ穴の狢。
時に、無性にニンゲンを喰いたい時があった。
そして、その喰った後に――。

 ガツッ
「ギギィィッ!!!」
 逃げを打っていた彼は、音も無く間近に迫っていた一撃を避けきれず、獣のような悲鳴を上げて木に衝突した。
久しい痛みに身体を丸めてのたうっていると、聞こえてくる。
 ざり、ざり、ざり、ざり――二人分の足音。
力を持ったニンゲン達が、彼を薄墨の何某と同じように、倒しに来る。
「……な、んで……」
 何故、こんな事になった?
彼は、今も未だ焦燥の最中にあった。
「……お前、貂(テン)ではないな。
その模様からして、穴熊か」
 黒いコートをまとった白い面(おもて)が、冷えた声を降らせた。
 言われて、ハッとして彼は己の顔に触れた。
肉の肌の感触と、ざらりとした毛の感触が伝わってくる。
「……これは、まさか……」
 その隣――鋭い面差しを更に鋭くしながら、青年が呟いた。
「皮被り、だな。
化けるほどの力の無い怪異がよくやる手だ」
 一笑すらせず、白い面が告げた。
 そう、彼には完璧に化けるほどの力は無い。
皮を被らなければ、ニンゲンに化けて、共生出来ない。
 それを思いついたのは、薄墨が喰った例の男の死骸を見つけてからだ。
丁度良く、皮が残っていた。
男は女と違い、基本的に硬くて不味いからか、内臓だけ喰われていた。
 だから、それを奪い、被った。
それが、始まり。
 それから、皮をとっかえひっかえしながら、彼は生きてきた。
昔の女は良かったが、今の女は匂いが強すぎる。
霊力の有無も大事だが、嗅覚が鈍るのは獣にとって致命的ともいえる。
 だから、女で良い獲物がいなければ、彼等のような少年も獲物の候補としていた。
そうして、十分に壊してから、力を奪い、喰らい――そして、皮を被る。
それが、彼の生業だった。
 そして、ニンゲン社会を生きてきた彼は、派手に動く事を嫌っていた。
だから、手の込んだ仕込みをして、ひっそりと狩りを愉しんでいた。
 そんな生き方を続けてきて、流離ってきた彼は、ふと古巣を思い出して戻ってきた。
その時に見つけた彼等に目星をつけてしまったのが、運のツキだった。
「……ふざけた真似を。
如何する?」
 押し殺したような声だった。
そして、返るのは沈黙。
 彼にも解っていた。
この場で生殺与奪を握っているのは、黒いコートをまとった方だと。
今さっきまで気づけずにいたが、アレはヤバいと本能が告げている。
 じりじりと、焦がすような焦燥に吐き気さえ催しそうだと、彼は歯噛みした。
「‥‥‥」
 彼は、痛みを堪えながら待った。
返答を、ではない。
逃げる隙を、だ。
 そして、彼は思いついた。
今、此処を抜け出す勝機を。
「ウゥガアァァッ!!」
 彼は、咆哮を上げた。
同時に、まとっていた皮を自ら剥ぎ取り、そのまま対するニンゲン達へとぶつけた。
「!」
 ほんの一瞬、怯んだその隙を――彼は、見逃さなかった。
 ザザザッ
 正体を見られるのも承知の上で、取り繕うのもかなぐり捨てて、彼は四足で全力で駆けた。
「ッ、待て――」
 背後から、声がした。
だが、構っていられない。
 痛みを堪えながら、彼はそのままの速度で駆け続ける。
目指すのは、巣。
此処まで来たら、彼等のどちらでも良い、捕まえてしまえばいいだけだ。
 彼は、またもそうしてたかを括ってしまった。
「待て、龍。
追う必要は、無い」
 動揺した様子も無く、白い面が静かに己が子を制した。
「何故?」
 燻る怒りを隠さずに子が問えば、白い面は変わらぬ様子で口を切った。
「手傷は負わせているし、場所は解っている。
既に、チーフが準備をしているはずだ。
何より――決着は、彼等に任せよう。
言いたい事の一つや二つもあるだろうしな」
「……あぁ、そうか。
確かに、そうだ」
 そこまで言われ、納得したように引き下がる。
それを見て、白い面が少しばかり表情を和らげた。
「後は、仕上げといこう。
未だ、余力は残しているな?」
「勿論」
「よろしい。
では、行こう」
 そして、黒いコートが翻(ひるがえ)った。
彼等が向かう先は、彼が向かったのとは反対側だった。

***

やっと此処まで来れました。
次でほぼ終わり、後はエピローグで丁度二十話くらいでしょうか。

尚、今回で諸々の種明かしも一通り出来たような気がしますが、見落としてる可能性もあるので、その場合はこっそり修正しますorz
書きながらこうしようかな的なノリで書いてきたので色々不安でしたが、何とかまとめられたと思いたい……gdgdで申し訳ない。
もう少しだけ、お付き合い下さい。
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プロフィール

KUROZ

Author:KUROZ
黒いまめっぽいナマモノ。
最近、珈琲がうめぇ。
禿げ散らかすのが気になるお年頃。
まめっぷ。

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