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鏡花水月・後日談小話・その二

忘れた頃に小話を書き上げるまめ野郎コンチクショウ。
昨日は忙しくて書き上げられなかったとです・・・!
四コマも今日中にアップ予定なので、もう少々お待ちを。
本当に鈍足で申し訳ないですorz
 
尚、此方も鏡花水月・続編のトゥルー後の一コマなので、ネタバレにご注意を。
また、生死にまつわる事で少し鬱に感じる表現もあるかもしれません。
それを踏まえて、何が来ても大丈夫という方のみ、折り曲げからどうぞ。
 
 
 
 
※龍樹視点です。
 
 
 見晴らしの良い小高い丘にある小さな霊園に、父さんと母さんの墓がある。
全てを終えるまで来ないと決意した日から、四年と数ヶ月――漸く、此処に来る事が出来た。
 ……長かった。
日常を奪われ、日陰に身を沈めてから、形振り構わずに復讐のために生きてきた過去を、今振り返る。
 様々な事が巡っていった。
全てが嫌になっていた時に、あの人が手を差し伸べてくれたからこそ、今がある。
 そうして、力を求めて復讐を誓い――けれども、結局それは果たさなかった。
 友と改めて呼べるようになった彼等がいたから。
似た境遇の同胞がそれを望んだから。
 今となっては、それで良かったと思う。
それまでの経過も、出来事も……全てが無駄ではなかったと、そう思える。
「……遅くなってごめん、来たよ」
 墓石の砂埃と枯葉を払った後で、墓前で手を合わせる。
そして、墓の中にあるカロートに、あの日彼等から受け取った二人の指輪を収めた。
 これからも日陰を進む以上、大事な物だからこそ手にしておく事は難しい――その上での判断だった。
 それを終えてから、改めて持ってきていた花と線香を供える。
そして、再び手を合わせて今までの出来事を心の内で報告した。
「……あの人を連れて来れなくてごめん。
父さん達に合わせる顔が無いって、頑なでさ」
 頑固もあそこまで来るといっそ清々しいと、苦笑してしまう。
とはいえ、俺とて今まで此処に来れなかった事もあって、引き摺ってでも連れてくる訳にはいかなかった。
 ……実際、気持ちは痛いほどに解る。
二人の遺骨の一欠けらすら無い此処に来ると、如何しても無力さが先に立つ。
 長年、心身を削ってまで携わってきた分、あの人の重責は俺の比ではないだろう。
そう思えば、無理は言えなかった。
 とはいえど、やはりあの人は莫迦は莫迦でも大莫迦だと思う。
俺が今の仕事を続ける事について、あの人はそうかと肯定とも否定とも取れない相槌一つで終わらせた。
 そして、指輪の事を解っていたのかと訊いた時も、あの人は顔色一つ変えなかった。
解ってはいたが、あそこで取り返す訳にはいかなかった――至極真っ当な理由を口にして、動揺など全く見せなかった。
 恐らく、あの人の事だ……自分が彼是言うべきでないと、無用な気遣いをしているのだろう。
一方で、俺がこれからも日陰を歩くと決めた事を歓迎してもいないのだ。
 だが、それをあの人は詰(なじ)ったりはしない。
言うべき事は言った、その上で決めてしまったのならば――それは、己が不甲斐無いからだ……と、過去から変わらずそう決め付けているに違いない。
 あの人の思考は、ひどく歪に捩れてしまっている。
真性の狂った運に憑かれた所為で、あの人は己を異物としか見ていない。
 今までに及ぶ『偶然の不運』の数々が、そのようにしてしまった。
チーフに聴いただけでも両手の数以上……その上にあの人自身の家族と俺の両親の事も相成り、己の存在を否まずにいられないのだ。
 ……だからこそ、自ら命も絶てない。
あの人にとって、死ぬ事は『幸運』だ。
行動に移せば、必ず周囲に害が及ぶ――だから、あの人は進んで死ぬ気は無いが、速やかに死ねる時を待ち望んでいる。
 そう知れたのは、つい最近だ。
あの通りに口が堅く、本心を隠すのが上手い人だ、訊いたところで核心に至ればかわしてすり抜けるだろう。
 だから、チーフ達の手を借りて、自分で調べた。
調べていくほどに、よくぞ正気を保っていられるものだと寒心すらした。
 いや、正気か狂気かでいえば、間違いなく後者だ。
もう無傷なところなど無いほどに、あの人は満身創痍なのだから。
 だが、そうであるからこそ、父さんとの想い出と『約束』を何より大事にしている。
あの人は、本当に如何しようもない大莫迦だ。
 だからこそ、放って置けない。
逆にそれが重荷になりかねないと解っていても、あれほどに如何しようもない人を独りにしておけない。
 父さんが生きていたら、きっと同じように言って、同じようにしただろう。
やはり親子だと、そう思いながらかつてを懐かしむ。
 今は、気持ちはすっきりと落ち着いていた。
あんなにも泥沼に沈むように悩んでいた時もあったというのに、それが嘘のようだ。
 こんなにも穏やかな気持ちで此処に来れるとは、今まで思ってもいなかった。
彼等と再会して、全ての『役目』を終えて――だからだろうか。
 恐らく……いや、間違いなくそうなのだろう。
俺は、独りでは生きてこれなかった。
あの人や彼等、チーフ達がいてくれたからこそ、今が在る。
「……俺は、幸せだよ」
 だから、現在を後悔したりはしない。
過去に立ち止まり、未来を閉ざそうとはしない。
 それを、彼等と彼が望んだから。
あの人と両親が願っただろうから。
「だからもう、大丈夫……俺は、生きて往けるよ」
 最早迷いは無いし、覚悟も決まった。
択んだ路は、決して平坦ではない――それでも、今なら進める。
「それは、幸いだ……と言ってやるべきなんだろうな」
 そうして墓前にいる俺の背を、聞き慣れた声が叩いた。
「……チーフ」
 視線を向けると、見上げるほどの長身がそこにあった。
「……結の代わりに、という訳でもないんだが、個人的に挨拶をしておきたくてな」
 そうして、此方に歩んでくるチーフの手には、花束が握られていた。
 そこで日本の仏花を持ってくる辺りがとてもらしいと思いながら、俺は立ち上がって場を空ける。
「……あの人に言ったんですか?」
「いや、言ってない」
 俺が問えば、手馴れた様子で花を供え、線香に火を点けながらチーフが返す。
 チーフは、組織内で様々な対応を任されている。
その上、公に出来ない組織であるから、時には不幸もある――そう思えば、墓前に手を合わせる様が何処か物悲しく見えた。
「言ったところで、反対はしないだろうさ。
アレが如何いう性格かは、お前も大体解ってきたはずだ」
 墓前を離れた後で、チーフは俺を振り返った。
「……そうですね。
面倒臭い人ですから、あの人は」
「ああ、全くな」
 そして、互いに苦く笑う。
本当は誰よりも此処に来たいくせに、それをしない。
 それを臆病と嗤うのは、至極簡単だ。
しかし、あの人の人となりを知ってしまうと、それは至極難解になる。
 全く以って、あの人は面倒臭い。
「……お忙しいところ、ありがとうございます」
「そう堅苦しくなるな。
これは、俺が勝手にした事だ。
別に礼を言われるような事じゃない」
 それから、改めて頭を下げると、チーフが軽く手を振った。
「……お前の親で結の友人か。
良い男だったんだろうな」
 そして、穏やかに告げた。
「そう、ですね……。
よく笑う人でしたよ」
 過去を思い返せば、父さんは何時も笑っていた。
その種類は喜びだけではなかったが、俺にとっては……いや、あの人にとっても、その印象が強く残っている。
「……笑うってのは、怒ったり哀しんだりするより疲れるもんだ。
お前は誇ると良い。
良い親に恵まれて、良い友人にも恵まれたと」
「……、そうですね。
ええ、そう思います」
 告げられた静かな言葉に、俺は深く頷いた。
ああ、確かに俺は親にも友にも恵まれた。
だからこそ、先の路を見る事が出来る。
歩む事も出来る。
 ……それを出来なかった、止めてしまった面影が脳裏に浮かぶ。
彼には、何も残らなかった。
何一つとして与えられなかった。
 だが、それを不幸だと訳知り顔で言いたくは無い。
彼自身がそれを望んではいないと――そう思えばこそ。
 その彼の遺骨は、彼が長く過ごした街の寺院で永代供養される事になった。
本来ならば天涯孤独であるため、無縁仏になるところだったのだが、此方で費用を負担する事でそのようにしてもらった。
 生きても独り、死んでも独りというのは、あまりにも哀しい。
何より、その生き様は俺にとって他人事では無さ過ぎた。
「……なぁ、龍樹よ」
 そうして過去を振り返っていると、チーフが口を切った。
「……何でしょう?」
「俺はずっと、お前と……お前の父親に一度謝らなければならないと思っていた」
 相槌を返せば、チーフが苦い表情でそう告げた。
その意外な言葉に、俺は驚く。
「! 何故、そんな……」
「結は裏方として優秀だ、それはお前もよく知っている通りにな。
だが、俺が誘わなければ、もっと違う未来があったのではと……少なくとも、お前の父親がこうなる前に一目逢えたはずだと、俺はずっと後悔していた」
「……チーフ」
 吐き出された言葉は、俺達がずっと抱え込んできたそれと同じく、幾重もの重みを感じさせた。
「もう既に過去の事だ……今更何を言ったところで変えられはしないし、ただの戯言に過ぎん。
……だが、全てが終わった今だからこそ、自己満足と知りながらも言っておきたくてな」
「――」
 そうして自嘲するチーフの表情には、疲れと悔いが色濃く浮かんでいた。
 今まで無為に問わず、協力してくれていた背景には、そんな想いがあったのだと初めて知った。
 そして多分、そんなチーフの心情をあの人は察している。
そうでもなければ、言わなかったとはいえ、こうもすんなりとチーフが此処に来れるはずが無いのだから。
「……お前も、この仕事を続けるんだろう?」
 胸に沈むような想いを如何言葉にすれば良いのかと迷ってると、不意にチーフが問いを投げかけた。
「……、ええ」
 ようようと頷けば、チーフは苦笑を浮かべて懐から木製のケースを取り出し、中の煙草を咥えた。
「今を逃せば……本当に戻れんぞ」
 煙草のフィルターを噛みながら、チーフが低く告げる。
「承知の上です」
 ああ、知っている。
だからこそ、あの人が珍しいくらいに何度も警告したのだという事も。
「表の友人達は如何する? 関わりを持つ以上、リスクは常に付き纏うぞ」
「……ええ、解っています。
白状すれば、要事に彼等を五体満足に守り切れる自信もありません。
ですが……彼等を切り捨てる事も、あの人から離れる事も、俺には択べないんです」
 淡々と現実を突きつけるチーフに、俺は苦く笑った。
人間とは欲張りな生き物だと知ってはいたが、それは俺も例外ではないらしい。
 選択出来る事は、果たして『幸運』か『不運』か。
それは解らない……解らないが――先があればこそ、択ぶべき路は存在するという事だけは知っている。
 だから今は、縁が途切れない限り、手が離れない限り、共に在りたいとただ願っている。
「……お前も大概、莫迦だな」
 そんな決意を知ってか知らずか、チーフはフィルターを強く噛んだままで笑った。
「本当に、お前達はよく似てるよ。
欲も張るが、身体も張るんだからな。
全く危なっかしい……なぁ、お前さんもそう思うだろう?」
 目を眇めながら、墓前へと視線をやってチーフは嘆息する。
その眼差しが、何処か墓石だけではない何かまで見えているように思えたのは、何故なのか。
「……そうですね。
俺は父さん達の子でもありますが、あの人の子でもありますから」
「……それなら、仕方ないな」
 つられたように同じ方へ視線を向けながら言えば、何処かチーフの声に混ざって、父さんの声がしたような気がした。
 実際、父さんがいたらそう言っただろう。
困ったように笑いながら。
「すいません……」
「こうなったら、最後まで面倒は見てやるさ」
 謝れば、チーフは苦笑した。
「お前の気持ちも、解らんでもない。
結を留めておくには、子供のように手でも掴んでおくしかないような危なっかしさがあるからな。
……アレは、確かに優秀だ。
だが、同時に如何しようもないくらいにも欠陥だ」
「そう、ですね。
ええ、本当に……その通りです」
 付き合いが長いのもあって、それは的確だと俺も頷くしかない。
だからこそ、チーフの理解と気遣いがありがたかった。
「……さて、そろそろ戻ろうと思うんだが、行きは送ってきてもらったものの、帰りの足が無くてな。
休暇中に悪いが、近くまで行ってもらって良いか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「すまんな」
 そうして、揃って踵を返す。
見れば、来た時には明るかった空も今は厚い雲ががかり、雨が降り出しそうになっていた。
 何処となく泣き出しそうに見えたそれは、一体誰の心情を表したものか。
そこまで考えて、詮索は野暮かとそれ以上は止めた。
「……また来るよ、父さん、母さん」
 最後に振り返り、二人に告げる。
今度来る時は、あの人を連れてこれると良い――そう思いながら、俺は先を行くチーフの後を追った。
 
 
***
 
 
龍樹は結をとても尊敬してるものの、とてもポンコツだと思っています。
チーフにしても、結は優秀だけど世に野放したらアカン奴だと思っています。
わいるど過ぎて残念な宮川科さんを放っておけない愁夜の保護者感と同じような感じですね。
 
因みに、結は元々使い勝手の良い案内役として、自前の創作キャラの下位互換として作成しました。
設定がやけに厨二なのも、大体元ネタの所為だったりします。
尚、性能差をドラクエで例えると結がキラーマシン、元ネタがキラーマジンガです。
そのキャラは未だ未登場ですが、前にピクシブやってた時に描いてたので、見た事ある方はあると思います。
要望があれば描くかもしれません・・・余裕があれば。
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KUROZ

Author:KUROZ
黒いまめっぽいナマモノ。
最近、珈琲がうめぇ。
禿げ散らかすのが気になるお年頃。
まめっぷ。

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